山形大学の研究グループは,赤色ナノ結晶LEDにおける世界最高水準の発光効率とデバイス寿命を維持しながら,大幅な高輝度化に成功した(ニュースリリース)。
超小型・高精細な次世代のディスプレー技術が求められているが,材料的な壁に直面して,有効な解決法は見出されていない。
研究では,無機・有機材料を組み合わせた赤色LED・マイクロLEDディスプレーの新技術開発を目指し,窒化物半導体InGaNを用いた青色LEDとペロブスカイトナノ結晶の塗布プロセスを組み合わせ,RGB発光素子を同一基板上に一体化する波長変換型構造に着目した。
電流注入を化学的に安定なInGaN半導体に限定することで,ペロブスカイトナノ結晶の劣化を抑え,高輝度発光を実現することが期待される。今回,青色InGaN LED上にCsPbI3ナノ結晶を組み合わせた赤色変換LEDを作製した。
まず,ホットインジェクション法で合成したCsPbI3ナノ結晶(平均サイズ:11nm)をメタクリレート系ポリマーバインダーに分散・封止して,光学特性評価を行なったところ,数百mW/cm2まで励起強度を上げてもCsPbI3ナノ結晶の発光強度の劣化が大幅に抑制できることを示した。
さらに,ポリマーバインダー分散によって,表面欠陥に起因する非発光再結合が抑制され,発光量子収率が向上することを明らかにした。これは,ポリマーと配位子が強固に結合することで,配位子離脱による表面欠陥の生成が抑制されたことに起因すると考えられるという。ポリマーバインダー分散によって,表面欠陥に起因する非発光再結合が抑制され,発光量子収率が向上することも明らかにした。
次に,青色InGaN LED上にポリマーバインダー分散型CsPbI3ナノ結晶膜をUV硬化樹脂で固定し,波長変換型赤色LEDを作製した。青色LEDのみに1mA(265 mA/cm2)の電流を流し,CsPbI3ナノ結晶膜導入の有無による光学特性の変化を評価した。
青色光はCsPbI3ナノ結晶でほぼ吸収されており,明瞭な赤色発光が観測された。点灯直後の発光強度・輝度はそれぞれ3.5 mW/cm2,1.9×103cd/m2と従来のCsPbI3ナノ結晶LEDよりも一桁程度高く,103時間のデバイス半減寿命を得た。
外部量子効率は最大値26.2%と,最新のCsPbI3ナノ結晶LEDと同程度でInGaN系赤色LED(10.5%)よりも高い値を達成した。
研究グループは,この技術を応用・発展して光のRGBのLEDを一体集積化することで,次世代のマイクロLEDディスプレーに向けた研究の加速が期待されるとしている。