ロームは,半導体素子である共鳴トンネルダイオード(RTD)を用いた,業界最小のテラヘルツ波発振デバイス及び検出デバイスのサンプル提供を開始した(ニュースリリース)。サンプル価格は,10万円/個(税抜)。
電波と光の中間の周波数領域に位置する電磁波のテラヘルツ波は,電波のような優れた透過性とレーザー光線のような直進性,高分子材料などに対する特有の吸収特性などのさまざまな特性を持つことから,放射線を使わない人体,物質の非破壊検査や従来の無線通信に代わる高速通信,高精細なレーダーセンシングなどへの活用が期待されている。
一方で,従来の方式では装置のサイズが大きく,導入コストも数百万円~数千万円以上と高額だったため,民間企業による研究や事業化は難しいのが実情だった。
今回同社が開発したのは,0.5mm×0.5mmサイズのテラヘルツ波発振用及び検出用のRTD素子。周波数320GHz(Typ.),出力10µW~20µWのテラヘルツ波を発振,検出できるとしている。このRTD素子を,LEDなどに用いるPLCCパッケージ(4.0mm×4.3mm)に搭載したサンプル品の提供を開始するという。
従来方式の発振装置と比べて体積は1000分の1以下と小型であり,限られたスペースでも手軽にテラヘルツ波アプリケーションの開発環境を構築できるという。発振デバイス及び検出デバイスのアンテナ面を10mmの距離で対向させた場合,ダイナミックレンジで40dB(Typ.)の検出性能を得ることができるとしている。
発振デバイス,検出デバイスともに駆動時の消費電力を10mW(Typ.)に抑えたほか,室温でテラヘルツ波を発振及び検出できることから,一部の従来方式で必要とされた装置の冷却も不要だという。小型で省電力かつ使用環境に左右されないデバイスであり,さまざまなアプリケーションへの活用が可能だとしている。