古河電気工業,慶應義塾大学,東京大学,大阪大学は,高度自動運転に必要となる次世代の車載ネットワークアーキテクチャであるセントラル&ゾーン方式に対応し,高信頼,低伝送遅延の車載光ネットワーク「SiPhON」のコンセプト実証研究と伝送デモを行なった(ニュースリリース)。
高度自動運転の実現には,搭載するカメラやセンサ等の電子機器の増大に対応した大容量かつ低遅延な車載ネットワークが不可欠となっている。さらには,耐環境性や電磁両立性性能,信頼性などの車特有の極めて厳しい要求条件をクリアする必要がある。
研究グループは,信頼性の高いシステムを実現するため,中核機能を担うセントラルECU(Electrical Control Unit)のマスター装置にのみ半導体レーザーを配置し,車を区画毎に統括するゾーンECUのゲートウェイ装置には,シリコンフォトニクス集積技術による変調器/受信器を配置して,その間を石英シングルモード光ファイバーで接続する通信方式(SiPhON)を提案し,実証研究を進めてきた。
この通信方式は,50Gb/sの伝送容量を持つデータ伝送用ネットワーク(D-plane)と制御信号伝送用ネットワーク(C-plane)からなる物理層を備え,伝送路と光源の二重化による冗長性を有し,シリコンフォトニクス技術を利用して低コストに高信頼性を得る。
マスター装置から送信された光は,各ゲートウェイ装置で透過,受信,あるいは,変調して出力され,再び,マスター装置に帰還して受信される。
新規に開発した光ファイバーと電源線の一括配線を適用することにより,シンプルな配索を可能としながら伝送速度50Gb/s以上の高速通信に対応し,100Gb/s以上の容量に拡張可能だという。
今回車載ネットワークを模擬したデモンストレーションシステムを構築した。マスター装置と4台のゲートウェイ装置間で2台の4Kカメラの映像信号と周辺監視レーダおよびLidarの低速データを同時に伝送し,低遅延なエラーフリー伝送を実証した。
4Kカメラで取得された情報は,この通信方式を介して画像処理装置に伝送され,物体・交通標識を認識した結果がリアルタイムで表示されるとしている。なお,デモンストレーションシステムには,この研究で開発された,シリコンフォトニクス素子,光ファイバー・電源線一括配索ハーネス(FASPULS)が搭載されているという。
研究グループは,この開発を進めることで,自動運転システムやコネクテッドサービスの進化が期待できるとしている。