矢野経済研究所は,国内の太陽光発電市場(新規・セカンダリー)の現状を明らかにし,2030年度までの太陽光発電導入容量予測について公表した(ニュースリリース)。
それによると,国内における2023年度単年度の太陽光発電導入容量は5,040MW(ACベース)と,FIT(再生可能エネルギーの固定価格買取)制度による太陽光発電設備の導入容量が縮小したことで,前年度からの大幅な減少を見込んでいるという。
FIT制度により導入された太陽光発電設備の中でも事業用の減少は著しく,売電価格の低下や2017年度の入札制度開始により認定容量が落ち込んだことで,2021年度以降,導入容量の縮小が続いている。特に低圧区分においては,2020年度より自家消費型の地域活用要件が設定され,発電電力量の少なくとも30%の自家消費等が求められるようになったことで,認定容量の減少幅が大きくなっている。
一方で,国内の太陽光発電市場では,FIT制度に依存しない事業形態であるPPA(Power Purchase Agreement)の導入が拡大している。オンサイトPPAは脱炭素化の潮流や電気代高騰を背景に導入が進み,2023年度の非住宅_オンサイトPPA導入容量は870MW(見込)と全体の17.3%まで拡大すると推計した。
また,オフサイトPPAについても,環境価値を重視する需要家による導入が進展したことで,2023年度の非住宅_オフサイトPPA導入容量は445MW(見込)と全体の8.8%を占めると推計した。
事業形態別に太陽光発電導入容量をみると,オンサイトPPAの導入容量は日本国内での導入が本格化した2020年度以降,順調に拡大を続けており,その増加ペースは年々加速している。企業等の需要家による脱炭素に向けた取組みの活発化に加えて,近年の電気代高騰が拡大の要因となっているという。
オンサイトPPAでは,電力を使用する建物の屋上や敷地内にPPA事業者が太陽光発電設備を設置・所有し,運転管理を行なう。需要家は太陽光発電設備の初期費用や運転管理などが不要というメリットがあるとしている。
2022年度頃から国内での導入が本格化してきたオフサイトPPAは,環境価値に対するニーズの高まりを背景に導入容量が増加している。オフサイトPPAは,需要家が電力を利用する拠点から離れた場所に,PPA事業者が太陽光発電設備を設置・所有し,運転管理を行なう。
需要家は,オンサイトPPAと同様のメリットを享受できるほか,PPA事業者が施設規模の制限を受けずに大容量の太陽光発電設備を設置できるため,長期にわたり大規模な再生可能エネルギー由来の電力導入が可能となるという。
なお,オフサイトPPAでは,大規模な太陽光発電所を設置し需要家に電力を供給するモデルのほかに,分散設置された低圧などの小規模な太陽光発電所から電力を供給するモデルがあるという。
国内における2030年度単年度の太陽光発電導入容量は,6,049MW(ACベース)になると予測する。オンサイトPPAやオフサイトPPAなどのFIT制度に依存しない事業形態での導入が増加することで,太陽光発電導入容量は2030年度にかけて徐々に拡大していく見通しであるとしている。
特に,1案件あたりの導入規模が大きくなる傾向のあるオフサイトPPAの導入容量は増加ペースが早く,2026年度には単年度でオンサイトPPAの導入容量を越える見込みだという。
一方で,FIT制度による太陽光発電設備導入容量の減少が続くことで,2030年度のFIT/FIP(Feed-in Premium)制度を活用した太陽光発電(住宅用及び事業用)導入容量は850MWと,全体の14.1%まで縮小すると予測している。