東大ら,ポリオキソメタレートを近赤外吸収半導体に

東京大学と岐阜大学は,ポリオキソメタレート(POM)を白金多核錯体で繋いで,電気を流すことに成功した(ニュースリリース)。

POMは,オレフィン水和反応における酸触媒,メタクリル酸合成の酸化触媒として工業利用され,水の酸化触媒の多電子移動反応の有望な候補となっている。最近では,集積体内の空孔を利用した触媒,吸着,プロトン伝導の機能性も見出されているが,POMの骨格自体を伝導体として検討しているものは,ほとんど無く,電子ドナー性の強いテトラチアフルバレンとの集積体,1例のみとなっている。

例が少ない理由は,POM自身がバルク固体では絶縁体であり,POM同士の電子的な相互作用が弱く,固体中で孤立した分子として振る舞うため。

そのような中,研究グループは,POMを一次元状の白金多核錯体と混合すると,両者が繰り返し並んだ集積体が得られ,電気が流れるパスが形成されることを見出した。POMに,Keggin型の{PMo123–を選び,白金四核錯体の{Pt44+を混合すると,–{PMo12}–{Pt4}–と繰り返し並んだ一次元集積体が得られた。

{PMo12}中の架橋酸素p軌道と,{Pt4}中の白金dz2軌道は,3.42Åの距離で近接し,–{PMo(+5.83)12}–{Pt(+2.25)4}–の混合原子価状態となり,各測定から,不対電子が一次元集積体全体にわたって非局在化していることがわかった。また,ペレット二端子法で測定した常温の導電率は 1.0×10−8S/cmで,活性化エネルギー0.60eVの半導体的に電気が流れることを明らかにした。

また,この集積化法には汎用性があり,負電荷をもち還元しやすいPOMと正電荷をもち酸化しやすい一次元状の白金多核錯体は,相性よく会合し,互いに酸化還元し,混合原子価状態となり集積化することがわかった。

Keggin型の{PMo123–と白金-パラジウム三核錯体の{Pt2Pd}2+を混合すると–{PMo(+6)12}–{Pt2Pd(+2.33)}–となり,Dawson型の{P2Mo186–と白金四核錯体の{Pt44+を混合すると–{P2Mo(+6)18}–{Pt(+2.25)4}–となり,常温の導電率は7.0×10−8S/cm,3.0×10−7S/cmと,より電気が流れやすくなることも明らかにしている。さらに,光学バンドギャップは0.6~1.2eVと近赤外光を強く吸収することもわかった。

研究グループは,POMはバンドギャップ制御,高伝導体,電池や触媒への応用が期待されるとしている。

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