東大,C4・C3植物の光合成能力を明らかに

東京大学の研究グループは,C3植物,C4植物,それらの中間型を含むフラベリア属植物8種,イネ科植物2種の光合成特性を比較調査し,弱光から強光に変化した際,C4植物,中間型,C3植物の順に素早く光合成が立ち上がることが分かった(ニュースリリース)。

光合成は作物の収量を大きく左右する。特に,高温・乾燥地域に適応しているC4植物は,C3植物には無い機能を持っている可能性があるため,C4植物の光合成の特徴を理解することは非常に重要となっている。

そこで研究グループは,C3植物,C4植物,それらの中間型を含むフラベリア属植物8種と,イネ科植物2種を栽培し,ガス交換測定装置を用いて,それぞれの光合成特性を測定した。CO2濃度を徐々に変化させながら光合成速度を測定した結果,CO2濃度が800μmol mol-1以下では,フラベリア属・イネ科植物ともにC4植物がC3植物よりも優れた光合成速度を発揮することが分かった。

次に,現在の大気CO2濃度に近いCO2濃度400μmol mol-1および,CO2濃度が上昇した大気を模倣したCO2濃度800μmol mol-1の2種類の環境下において,暗黒状態から一定の強光を照射した光合成誘導の解析を行なった。

そして,光合成速度,気孔コンダクタンス,電子伝達速度が最大値の50%値に到達するまでに要した時間(=t50)と最大値の90%値に到達するまでに要した時間(=t90)を導出し,比較を行なった。

結果として,CO2濃度400μmol mol-1では,フラベリア属においてはC4植物,C4-like植物,C3-C4中間型植物,C3植物の順で,イネ科植物においてもC4植物,C3植物の順で,光合成速度と気孔コンダクタンスの素早い上昇がみられた。CO2濃度800μmol mol-1では,C4植物の優位性は見られなかった。

また,得られたデータから,CO2濃度400μmol mol-1において光合成速度のt90とCO2補償点,気孔コンダクタンスのt90とCO2補償点,光合成速度のt90と気孔コンダクタンスのt90の間には,それぞれ相関関係があることが判明した。さらに,C4植物はCO2濃度に依存せず,常にC3植物より優れた水利用効率を示すことも明らかになった。

これらのことから,C4植物の素早い光合成誘導や乾燥に強いという特性は,進化の過程で獲得したCO2濃縮機構や素早い気孔応答に起因することが示唆された。研究グループは,これから人類が直面する地球温暖化,気候変動などの問題を解決するための重要な研究成果だとしている。

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