新潟大,超解像顕微鏡でアクチン細胞骨格を3D撮影

新潟大学の研究グループは,超解像顕微鏡を使って成長円錐の形を作っているアクチン細胞骨格の3次元画像を撮影した(ニュースリリース)。

神経突起を先導する成長円錐は正常な脳がつくられるときだけでなく,傷ついた神経を正しく再生させるときにも不可欠なナビゲーション機能をもっている。そのため,成長円錐の構造や動きの仕組みを調べることは重要だが,成長円錐は非常に小さく,薄い構造であるため,これまでの顕微鏡で成長円錐の構造や動きを明瞭に撮影することは困難だった。

アクチン細胞骨格は底面の接着分子と連結することでずれることなく,確実に移動方向にだけ伸び,前進・伸長する力を発揮できる。そのため,アクチン細胞骨格は成長円錐の接着面に集合しているのではないかと予想していたが,実際には成長円錐の接着していない表面の側に偏って分布していた。

研究グループは,成長円錐を移動方向に変形させるアクチン細胞骨格が一見無関係に見える場所に集まる原因について,継続して超解像顕微鏡による解析を進めてきた。

研究グループは,マウス胎仔脳で成長中の神経細胞を培養して,小さくて薄い成長円錐の構造を立体的に観察するため,従来の顕微鏡に比べて,2倍の分解能を持つ超解像顕微鏡(構造化照明顕微鏡)を使って,さまざまな種類の神経細胞で成長円錐の3次元画像を撮影した。

その結果,全ての成長円錐で,接着していない表面からアクチン細胞骨格の束でつくられた微小突起(約2.5µm)がz軸方向に突き出ていることを発見した。さらにこの働きを詳しく分析するため,神経系の腫瘍株細胞NG108-15を用いてライブ撮影を行ない,この微小突起がつくられて,1分程度で縮んで消えることを繰り返すことが分かった。

またガイダンス分子の受容体の1つであるニューロピリン1が微小突起に強く集まることを突き止め,結合相手であるガイダンス分子(セマフォリン3A)が微小突起に結合することを証明した。

これまで成長円錐の変形,移動に関わるとされていたアクチン細胞骨格が,成長円錐の表面で伸縮するガイダンス分子を捕える微小突起もつくることが初めて明らかになった。このような構造が,成長円錐の表面から突き出た微小突起で,ガイダンス分子の検出に特化した役割を持つことを初めて証明した。

研究グループは,今回発見した微小突起を誘導する分子メカニズムの解明が進むことで,成長円錐の移動とガイダンス機能のそれぞれに関係するアクチン細胞骨格の形成のメカニズムの違いが明らかにできるとしている。

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