国立天文台(NAOJ)は,複数の機械学習モデルを組み合わせて,ガンマ線バーストという宇宙で最も明るく激しい爆発現象の距離測定の精度を格段に向上させる新たな手法を開発した(ニュースリリース)。
ガンマ線バーストは,数秒で太陽が一生かけて放出するのと同じ量のエネルギーを放出する。ガンマ線バーストは極めて明るいので,光で見ることができる宇宙の最遠端を含め,遠く離れていても観測することができる。
そのため,ガンマ線バーストは最も年老いた最も遠い星を探すのに有用。しかし現在の観測技術の限界のため,ガンマ線バーストの中で,どのくらい遠くで起きたのかを計算するのに必要となる観測量が全て測定されているのは,ごく一部しかない。
研究グループは,複数の機械学習の手法を駆使して,スウィフト衛星に搭載されている紫外線/可視光望遠鏡と,すばる望遠鏡を含む地上望遠鏡とで観測されたガンマ線バーストの距離を正確に測定した。推定した頻度は,観測によって実測された頻度に非常に近い値になることがわかった。
また別の研究グループは,スウィフト衛星に搭載されたX線望遠鏡(XRT)によって観測されたガンマ線バーストの残光データに対し,機械学習を適用することで,ガンマ線バーストの距離を測定することに成功した。
これらのデータはいわゆるロング・ガンマ線バーストというガンマ線バーストの種類から得られたもの。ガンマ線バーストは様々なプロセスで起こると考えられている。ロング・ガンマ線バーストは,大質量星が寿命を迎え,超新星爆発を起こしたときに起きる。それに対しショート・ガンマ線バーストと呼ばれる別の種類は,中性子星などの恒星が死んだ後に残る残骸同士が衝突するときに起きる。
このアプローチの新規性は,複数の機械学習手法を組み合わせて,その総合的な予測能力を向上させる点にある。この手法は,「超学習」と呼ばれ,各機械学習手法に0から1の範囲で重みを割り当てる。この重みがそれぞれの手法の予測能力に対応する。
さらに,スウィフト衛星が取得したX線データを使って得られたガンマ線バーストの発生頻度が,少なくとも相対的近い距離では,星形成率に従わないことがわかった。これは,近距離でのロング・ガンマ線バーストが,大質量星の崩壊によってではなく,中性子星のような非常に密度の高い物体の合体によって生成される可能性を示している。
研究グループはこの研究について,ガンマ線天文学と機械学習の両分野における新たなフロンティアを切り開くものだとしている。