阪大ら,有機分子のりん光の高速化・高効率化に成功

大阪大学と九州大学は,有機分子のりん光効率の世界記録を大きく更新し,その鍵である高速りん光のメカニズムを解明した(ニュースリリース)。

りん光は,高エネルギー状態の分子が電子スピン(自転のようなもの)の向きを変えながら発光する現象で,有機ELやがんの診断に有用となっている。

これまで高効率なりん光を得るには,イリジウムや白金などのレアメタルを使うことが重要と考えられていた。しかし,レアメタルは安定供給に課題があり,また,レアメタルを使わずに有機分子で高効率なりん光を実現するメカニズムについては解明されていなかった。

研究グループでは,独自に開発したレアメタルを含まない有機分子チエニルジケトンの発光を時間分解分光などの方法で詳細に調べた。その結果,この分子のりん光効率が溶液中では最大38%であり,これまでの世界記録を2倍以上も上回ることを解明した。また,この分子を高分子に少量添加することで作製した薄膜は,大気下で50%を超えるりん光効率を示した。

さらに,この高効率なりん光の起源が,りん光の高速化にあることも明らかにした。その速度は約5,000毎秒と見積もられたが,これは従来の有機分子より1桁以上大きく,レアメタルである白金を使ったりん光(約8,300毎秒)に迫るほどの速度だった。

この高速りん光のメカニズムは,量子化学計算によって解明された。りん光は三重項状態という高エネルギー状態から生じる発光だが,一般的に純粋な三重項状態は発光しない。しかし今回の分子の三重項状態には,発光性の強い別の状態が1%ほど混合していることがわかった。

このような強い状態混合が,高速りん光を可能にしたと考えられる。このメカニズム解明により,レアメタルを使わずに高速りん光を実現するための分子設計の指針が得られた。

研究グループは,この研究成果により,レアメタルに頼らずにりん光を示す有機分子の設計指針が得られ,レアメタル材料を凌駕・代替する有機りん光材料の開発が期待されるとしている。

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