古河電工,超低消費電力ラマン増幅器用励起光源開発

古河電気工業は,高出力低消費電力駆動のラマン増幅器用励起光源「FRL1441Uシリーズ」について,C帯での55℃動作を達成し,無効電力を半分以下に削減することで500mWファイバ出力時の消費電力が従来製品の仕様8Wと比べ半分以下となる3.7Wの超低消費電力駆動を確認,量産技術開発を開始した(ニュースリリース)。

クラウドサービスの普及や生成AIの登場を背景にデータセンタなどで通信トラフィックが増大するなか,通信伝送速度の高速化に伴い,信号受信側のOSNRの劣化により伝送距離が短尺化し,特に既存の通信システムを活用して高速化する場合,信号光の品質を劣化させずに光出力を増幅するラマン増幅器の役割がより重要となっている。

また,高速伝送により信号の波長幅が拡がるため,大容量伝送を行なうためには波長帯域の拡大が必要となり,励起用光源の波長を選択することで任意の信号光源を増幅できるラマン増幅器には高い柔軟性が求められる。

一方で,従来のC帯・L帯に加え,S帯やU帯への帯域拡張により,使用される励起光源の数が増加するため,高出力低消費電力での駆動が一層重要になる。励起光源は,搭載している熱電クーラー素子の消費電力削減が励起光減全体の消費電力削減につながる。

励起光源が高温環境で使用される場合,LDチップを冷却する必要があるが,これにより熱電クーラー素子の電力消費が増加し,励起光源の消費電力が上昇してしまう。そのため,励起光源の低消費電力化にはLDチップの高温動作が重要な要素となっている。

このシリーズは,S帯・C帯・L帯において既存のラマン増幅器用励起光源と比べて消費電力を37%削減し,デュアルポート光源の開発により従来は2台必要だった励起光源を1台に置き換えることで省スペース化が図れるのが特長だという。

今回は,レーザー光の高出力化とレーザー素子の電気抵抗低減の両立を実現させるためのLDチップの最適化により,C帯において,LD温度55℃で840mWを14ピンバタフライパッケージで達成した。また,55℃のレーザー素子の高温駆動により無効電力を大幅に削減することで,現在広く使用されている500mWファイバ出力品の消費電力を,従来製品の仕様(8W)と比べ半分以下の3.7Wに抑えられることを確認し,量産技術開発を開始した。

この開発には,InP系光半導体材料を用いた光半導体プロセス技術と高精度のファイバ結合技術に加え,同社独自の低損失・高効率の半導体レーザー素子構造を採用しているという。

その他関連ニュース

  • NEC,5G/6G向け光ファイバ無線システムを開発 2024年06月20日
  • 東工大ら,サブテラヘルツ帯CMOS ICで640Gb/s伝送 2024年06月19日
  • SB,独自アンテナで走行車にテラヘルツ通信 2024年06月05日
  • 古河電工ら,出力5kWの青色レーザー発振器を開発 2024年06月04日
  • 富士通,IOWN向け光伝送ソリューションの提供開始 2024年05月28日
  • 【解説】青色半導体レーザーの高出力化が進展も,実用化にはビーム制御も重要 2024年05月22日
  • NTT,光と無線のリアルタイム連携制御を実証 2024年05月16日
  • 京大,サブテラヘルツ帯電波伝搬シミュレータを開発 2024年05月15日