矢野経済研究所は,2024年の偏光板及び部材フィルム世界市場を調査し,製品セグメント別の動向,将来展望を明らかにした(ニュースリリース)。
それによると,2023年の偏光板世界市場(メーカー生産量ベース)は,前年比114.2%の56,445万m2と推計した。2023年の偏光板世界市場は第3四半期(7~9月)まで好調を維持し二桁成長で需要回復するも,10月から始まったTVパネルの生産調整により第4四半期(10~12月)は出荷量減少となったが,2023年通年では前年より大幅に市場が回復した。
偏光板市場の回復を牽引したのは65インチ以上の大型TVパネルの生産拡大であった。中国のディスプレーパネルメーカーのみならず,台湾・日本のパネルメーカーの生産拡大が好材料となり,大型TVパネル向けを手掛ける偏光板メーカーは2023年第3四半期(7~9月)にはフル稼働まで生産が回復した。
2022年,この調査で注目した大型TVセットは売れ行きが低迷し,TVパネルメーカーでの主力生産品は開発途上国でのプロモーション活動で堅調な販売を維持した32インチや43インチクラスの小型TV向けディスプレーが主力であった。
その後,Middle-Low End TV需要が一巡したため,2023年からはHigh-End TV市場が動き,主力生産インチは55インチ以上の大型TVパネルに切り替わった。TVパネルメーカーでは,65インチ以上のTVパネルの生産が主力となった。
2024年もボリュームゾーンである65インチの他,75インチ,85インチの超大型パネルの生産が拡大しており,TVディスプレーサイズをアップしていることもTVパネル向け偏光板世界市場の下支えになっているという。
将来展望については,面積効果が大きい大型TVパネル向け偏光板需要が市場全体を牽引する形で,2024年の偏光板世界市場は59,580万m2まで拡大すると予測した。
2023年第4四半期(10~12月)より偏光板メーカーのTVパネル向け出荷量が減少したが,2024年2月頃からTVパネルメーカーの在庫補充需要などが発生し,偏光板メーカーの生産稼働率も大幅に回復しているという。
春節連休の後半より中国TVパネルメーカーはTVパネルの生産稼働率を急激に上げ,2月末時点で中国TVパネルメーカーの稼働率は大手のCSOT,BOEなどを中心に90%以上のフル稼働となったほか,台湾・日本のTVパネルメーカーも稼働率が上昇し生産量が拡大したとしている。
そのため,大型TVパネル向けを手掛ける偏光板メーカーを中心に,TVパネル向け偏光板の生産ラインはフル稼働が続いており,2024年5月末まではディスプレーパネルメーカー・偏光板メーカー共にフル稼働の予定となっているという。
しかし,TVセットメーカーからの需要動向や,ディスプレーパネルメーカー側で溜まったTVパネル在庫の水準,TVセットメーカーの前倒し発注・ダブルブッキングなどを考慮すると,2024年下期(7~12月)からはディスプレーパネルメーカー・偏光板メーカーの生産稼働率は低下していくと予測した。