京大ら,微小ナノダイヤモンドで温度量子センサ実現

京都大学,量子科学技術研究開発機構(QST),ダイセルは,爆轟ナノダイヤモンド中に,強く安定した光検出磁気共鳴(ODMR)信号を持つ窒素-空孔(NV)中心を多数計測することに成功した(ニュースリリース)。

小粒径のナノダイヤモンドの合成は爆轟法が有力だが,従来の爆轟ナノダイヤモンドはNV中心の濃度が低い,ODMR信号が低く不安定といった問題があった。

今回用いた試料はダイセルが開発したSi-DNDを基礎としている。測定の結果,Si-DNDの平均粒径は11.2nm,標準偏差は3.0nmだった。

次にSi-DND懸濁液をガラス基板に滴下,乾燥した領域を共焦点レーザー顕微鏡で観察し,画像中の輝点からODMRスペクトルを測定したが,大半の輝点で発光強度の変化が確認できず,唯一反応があった輝点でもコントラスト0.4%と非常に低かった。

研究グループは,Si-DND中にNV中心が存在するのかSRスペクトルも測定し,NV-の存在を示すピークを確認した。ただし,このESRスペクトルにはグラファイトや金属不純物由来と考えられるバックグラウンドも存在した。

グラファイト等を取り除く方法として長時間の熱混酸洗浄がある。洗浄後のSi-DNDに対してESRスペクトルを測定した結果,信号を妨害する不純物が除去でき,相対的にNV中心のピークが強くなった。

ESRスペクトルでは,NV-濃度が既知の試料と比較してDNDのNV-濃度を求めることができる。その結果,Si-DND中のNV-濃度は0.35±0.05ppmとなった。次に洗浄後のSi-DNDに対してODMRスペクトルを測定した結果,コントラストが15%となり測定した輝点の約50%でODMRの信号が確認できた。

高コントラストなODMRスペクトルが測定できたため,次にNV中心を用いた温度計測を行なった結果,温度上昇に伴ってピーク周波数が低周波数側にシフトした。また,ピーク周波数の温度依存性を調べた結果,変化率は-71.2kHz/Kとなった。

変化率が求まったことで,10秒の積算時間に対しておよそ1K以下の不確かさで温度変化を検出できることがわかった。

Si-DNDにはSiV中心も存在する。SiV中心も温度変化によって発光のピーク波長が長波長側にシフトし,Si-DND中のSiV中心も温度センサとして利用できることを確認した。NV中心だけでなくSiV中心も存在することは,多角的な温度計測ができることを意味する。

研究グループは,今後,ナノダイヤモンドを細胞核やミトコンドリア等の細胞小器官に導入できれば,微小領域での量子センシングが期待できるとしている。

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