東大ら,金属のように熱を通す絶縁体ゴムシート開発

東京大学と産業技術総合研究所(産総研)は,窒化ホウ素フィラーと,環動高分子のポリロタキサンを複合化し,金属のように熱を通す絶縁体のゴムシートを開発した(ニュースリリース)。

熱層間材は,シートの厚み方向の高い熱伝導性だけでなく,様々な形の電子部品に密着して熱を受け渡すための柔軟性や,外部から電子部品を電気的に保護する絶縁性も併せ持つ必要がある。

しかし従来,金属並みの10W/mK以上の熱伝導率と,ゴムのような柔らかさの指標となる100MPa以下のヤング率に加え,電気絶縁性をも兼ね備える熱層間材は実現していなかった。

研究グループは,環動高分子ポリロタキサンを母材として,水中プラズマにより表面改質した高熱伝導性の窒化ホウ素フィラーを加えた,しやなかで放熱性に優れたゴム材料を開発してきた。

ポリロタキサンは,直鎖高分子と,その上で動く環状分子からなる超分子の一種で,その環状分子を架橋点とするゴムは,伸びやすくちぎれにくい性質を持つ。この高分子に均一にフィラーを分散させるために,水中プラズマ処理により表面に水酸基などの官能基を導入した。

窒化ホウ素フィラーは,板状の単結晶構造を持ち,板面に沿った方向に高い熱伝導性を持つため,ゴムと複合化する際にフィラーの板面が互いにそろうように配向させる必要がある。

そこで今回,パルス交流電界を採用し,電極配置を改良することで,電界強度を従来の50倍に高めた。これにより,短時間の印加で高分子のゲル化を抑制しながら窒化ホウ素フィラーの配向度を高めることが可能になった。

従来の正弦波交流電界印加では,フィラー濃度が30重量%以上では配向困難であることが報告されてきたが,今回のパルス交流電界印加では,世界的に高いレベルの最大65重量%でも配向を示すことができた。実際に,パルス交流電界印加した窒化ホウ素フィラーとゴムの複合シートでは,厚み方向の熱伝導率が金属並みに高い11W/mKの値を示した。

同時に,このシートはヤング率が58MPaとゴムレベルの低い値を示し,体積電気抵抗率は1.9×1011Ωcmであり電気的に絶縁体であることも分かった。以前に発表した複合材料に対して,低いヤング率を維持しつつ,シート厚み方向に1桁高い熱伝導率を実現したものであり,既存の材料とは異なる新領域の材料,金属のように熱を通す絶縁体のゴムシートとなっている。

研究グループは,このゴムシートは,スマートフォン等の電子部品の放熱シートへの応用が期待されるとしている。

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