政府は4月26日,宇宙基本計画に基づき,宇宙戦略基金の事業全体の制度設計を定める「基本方針」及び実施する技術開発テーマを定める「実施方針(総務省・⽂部科学省・経済産業省計上分)」を策定したと発表した(内閣府HP)。
宇宙戦略基金について,まずは当面の事業開始に必要な経費を措置しつつ,速やかに10年間で総額1兆円規模の支援を行なうことを目指す。令和5年度補正予算としては,総務省計上分が240億円,⽂部科学省計上分が1,500億円,経済産業省計上分が1,260億円で,3,000億円となっている。
今回,技術開発テーマとして22が選ばれた。そのうち,総務省から3つ・文部科学省から2つが光関連技術となった。
総務省の開発テーマのうち,1つ目は「衛星量子暗号通信技術の開発・実証」。この研究開発においては,将来の事業化におけるユーザビリティの観点からも,少ない衛星基数でも地球規模での情報理論的安全な鍵共有を可能とする。
気象条件や運用コスト等による制約を最小限とする効果を狙うため,我が国独自の低軌道衛星と地上局の双方を開発し,情報理論的に安全な暗号通信を実現できる新たな量子鍵配送技術及び物理レイヤ暗号技術の実証を進める。
2つ目は,「衛星コンステレーション構築に必要な通信技術(光ルータ)の実装支援」。衛星コンステレーション用光通信ネットワークルータの技術開発を行ない,宇宙を活用した非地上系ネットワーク(NTN)の時間的,空間的,品質的,柔軟性を向上する通信基盤技術を確立し,B5G時代の通信需要拡大にも貢献する。
3つ目は,「月面の水資源探査技術(センシング技術)の開発・実証」。このテーマでは,テラヘルツ波を活用した水資源探査技術を活用し,これまでの技術開発成果等を統合した衛星を開発し,周回軌道・観測することにより,広域での月面の水資源の実態を把握することを目指す。
文部科学省の開発テーマの1つ目は,「高分解能・高頻度な光学衛星観測システム」。このテーマでは,民間主体での技術開発・実証として,高頻度な3次元観測を可能とする高精細な小型光学衛星による観測システム技術の高度化を行なう。
これにより,都市デジタルツインの構築,基盤地図情報の整備等に向けた3次元地形情報の取得,インフラ監視やスマート農林業等に関する国際競争力のあるグローバルビジネスの展開を強化するとともに,災害発生時の緊急観測やベースマップの整備等,我が国における社会的ニーズへの対応にも貢献する。
2つ目は,「高出力レーザーの宇宙適用による革新的衛星ライダー技術」。このテーマでは,衛星ライダーの機能向上に資する宇宙用レーザーシステムの実現に向けて,我が国が有する高出力なレーザー技術の宇宙適用に係る技術開発を推進する。
宇宙基本計画では,宇宙産業を日本経済における成長産業とするため,宇宙機器と宇宙ソリューションの市場を合わせて,2020年に4.0兆円となっている市場規模を,2030年代の早期に2倍の8.0兆円に拡大していくことを目標としている。