北海道大学,岡山大学,韓国科学技術院(KAIST)は,超高速の光パターン照明手法の開発に成功した(ニュースリリース)。
空間光変調器(SLM)は,複雑なパターンの照明を可能とする電子デバイスで,例えばプロジェクタの表示デバイスとして,世界中で普及している。しかし,SLMのパターン切り替え速度は最短でも50μ秒程度にとどまるため,その性能はこれまで十分に生かされていなかった。
研究グループは,SLMの構成を根本的に見直し,市販のSLMの約1,500倍高速な,0.03μ秒の切り替え速度を持つ超高速の光パターン照明手法を開発した。この手法は,高速化の鍵となる独自開発の1次元SLMと,1次元照明パターンから3次元照明パターンを生み出す「すりガラス」を組み合わせることで実現した。
前者は,デジタルミラーデバイス上で走査ミラーにより細長いレーザービームを走査するという独自の工夫により,照明パターンを単純な1次元形状に限定する代わりに,圧倒的に高速なパターンの切り替えを可能にした。
後者では,身近なすりガラスを用いて1次元照明パターンのレーザー光を四方八方に散乱させ,散乱の結果生じるパターンから逆算して1次元照明パターンを決める。これにより,高速切り替えの代わりに制限されていた照明パターンの形状を,3次元空間に広げることができるようになった。
はじめに,最も単純なパターンである光スポットのオン/オフの変化を観察することで,開発手法のパターン切り替え速度を確認した。その結果,光スポットがオンの状態とオフの状態が約0.03μ秒で繰り返されていることを示した。言い換えると,開発手法により1秒間に3,000万回パターンを切り替えることができるということになる。
また,この手法が16個の光スポットで構成される高速なパターン照明が可能であることを示した。さらに,二つの光スポットで構成される照明パターンを0.03μ秒で切り替えられることを示し,超高速のパターン照明の実証に成功した。
研究グループは,この超高速の光パターン照明手法は,例えば従来のSLMでは不可能な生命機能の光計測や光操作(光遺伝学)の高速化・大規模化や金属3Dプリンタなどの光加工の生産効率向上など,様々な分野での応用が期待されるとしている。