京大ら,高出力狭線幅フォトニック結晶レーザー実現

京都大学と三菱電機は,フォトニック結晶レーザー(PCSEL)において,これまでの半導体レーザー素子単体では実現が困難であった高い出力と狭い固有スペクトル線幅の両立を実現した(ニュースリリース)。

研究グループはこれまで,直径250μmのPCSELにおいて,70kHzという狭い固有スペクトル線幅と,宇宙空間における自由空間通信方式への適用可能性を実証している。今回,PCSELの高出力・高ビーム品質をそのままに,より狭い固有スペクトル線幅を実現するため,面積を250μmから1mmに拡大したPCSELを設計,開発した。

PCSELは原理的に狭い固有スペクトル線幅が期待されるが,この特長を引き出すには,発振面積を拡大した際,面内の共振周波数分布の均一化が重要。発振領域内で一様な電流密度分布で電流を連続注入した場合,素子内部の発熱によって共振周波数に面内分布が生じ,面内損失の増大が予想される。

これにより素子内部の光子数が減少してスペクトル線幅の増大を招くほか,高速自己変化現象によって短パルス発振の発生も懸念される。そこで研究グループは,中央部分の電流分布を低減する工夫をした。これより,温度分布が平坦になり,面内損失の大幅な抑制が期待される。

研究グループが開発してきた二重格子構造では,2つの空孔の距離と大きさを調整することで,面内損失および放射損失を独立して制御できる。面内損失が大きい場合,線幅の増大や自己変化による不安定化を招く可能性がある一方,面内損失を過度に小さくすると高次モードの発生による線幅の増大が懸念されるため,適切な面内損失を設定する必要がある。

さらに,高出力と狭線幅の両立には,光を上部へ効率良く取り出すことが重要で,適切な放射損失も求められる。今回,高出力動作と狭線幅動作の両立が可能なフォトニック結晶構造を見出した。

これを踏まえて作製したPCSELを室温連続動作させると,電流8Aで5Wという光出力が得られた。さらに発振波長940nmにおいて,バックグラウンドの強度に対して72dBという極めて高い強度で単一波長発振した。

周波数雑音スペクトルの測定から,高い周波数の領域 (>106Hz) では周波数に対して一定の強度の雑音が見られた。これが半導体レーザー固有のスペクトル線幅(自然放出雑音)であり,ここから見積もったスペクトル線幅は測定限界の1kHz程度となった。

研究グループは,衛星間通信や衛星搭載ライダーなどの宇宙応用,さらには原子冷却等,様々な分野の発展にPCSELが貢献できることを示す成果だとしている。

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