慶應義塾大学の研究グループは,蛍光イメージングで汎用されるローダミン蛍光色素の新たな蛍光特性を発見した(ニュースリリース)。
生命現象を解明するには,生体内で生体分子や生体環境がどのように変化するか観察することは必要不可欠であり,蛍光イメージングは有用な技術となる。蛍光イメージングには蛍光プローブは必須であり,ローダミン蛍光色素は蛍光プローブの骨格として汎用されてきた。
研究グループが初めて解明した,無蛍光性のローダミン誘導体の消光メカニズムにヒントを得て,ローダミン蛍光色素の分子内でねじれを起こすことで蛍光を消光できることを発見した。
さらに,この消光構造を利用して薬物代謝酵素であるシトクロムP450の一つのサブタイプであるCYP3A4のN-脱アルキル化を受けることで,酵素活性を検出し蛍光を発する蛍光プローブの開発に成功した。CYP3A4は医薬品の約半数の代謝に関わるため,この蛍光プローブは薬物間相互作用の検出法として有用になる。
また,CYP3A4が成熟肝細胞および腸管上皮細胞の成熟度を示すマーカーの一つであることを利用し,開発した蛍光プローブを用いてヒトiPS細胞から分化誘導した上記成熟細胞を分離・精製することに成功した。
研究グループは,この研究成果は,これまでに開発が難しかった生命現象に対しても蛍光プローブの開発が可能となり,研究分野を大きく発展させるとする。
また,CYP3A4は医薬品全般の主要な代謝酵素であり,その活性を検出する蛍光プローブは,創薬・再生医療分野へと今後さらに貢献していくことが期待されるとしている。