東大ら,効果的に防除できる赤色防虫ネットを開発

東京大学,京都府農林水産技術センター,日本ワイドクロスは,ネギやキャベツの難防除害虫ネギアザミウマの色に対する応答反応を解析し,効果的に防除できる新型赤色防虫ネットを開発した(ニュースリリース)。

今日,農業生産現場では,農薬に頼らない防除技術へのニーズが高まっており,特に九条ネギ等のブランド京野菜では一層の減農薬栽培が求められている。

農薬に代わる物理的防除技術として,最近10年ほどの間に赤色防虫ネットが生産現場に普及しつつあるが,減農薬技術としての十分な効果が得られているとは言えず,また,防除効果を示すメカニズムについても不明だった。

研究グループは,様々な色の織り糸を組み合わせた防虫ネットを使った室内実験及びほ場試験により,重要害虫ネギアザミウマの赤色防虫ネットに対する反応特性を解明し,防除効果の高い新型赤色防虫ネットの開発に取り組んだ。

その結果,ネギアザミウマに対する侵入抑制効果(侵入率)は,織糸の組み合わせが,赤と黒と赤と赤で最も高く,従来の白と白のそれぞれ約1/14,1/8に抑えられた。

また,赤色防虫ネットをほ場全体に被覆した場合,ネギアザミウマの発生密度はネットを被覆しない場合の約1/10に抑えることができ,ほ場を赤色防虫ネットで囲った場合でも約1/2に抑えることを実証した。

さらに,ネギアザミウマが各種防虫ネットを通り抜ける反応について,繊維の色と侵入率の関係を統計学的手法により分析した。

すると,室内実験(二者択一実験)から,従来の非赤防虫ネット(白白,黒黒,黒白)に比べて赤色防虫ネット(赤白,赤黒,赤赤)の侵入率が低下することが確認できた。

研究グループは,この研究で開発した新型赤色防虫ネットを発展・活用することにより,殺虫剤のみに頼らない農業生産体系の構築や,農作物の輸出における残留農薬問題の軽減,有機栽培の促進に寄与することが期待されるとしている。

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