すばる望遠鏡は,かみのけ座銀河団から数百万光年にわたって延びるダークマターの様子を捉えた(ニュースリリース)。
我々は通常,惑星,衛星,太陽のような丸い形として物質が集まるのを見慣れている。しかし,宇宙の大部分の質量を占めると考えられているダークマターは,細長い糸状のコズミックウェブの形で存在していると信じられている。
ただし,蜘蛛の巣のように,これらの糸は見えにくく,天文学者達は,銀河やガスの観測から,そのような構造を推定してきた。これは,空中に浮かんでいるように見える枯れ葉があったときに,それを支えている見えない蜘蛛の巣があると考えるのに似ている。
研究グループは,銀河団同士をつなぐ暗黒物質の糸(フィラメント)を検出するために,かみのけ座銀河団に着目した。
かみのけ座銀河団は,我々から最も近い大規模な銀河団の1つで,うすく広がったダークマターの構造を検出するのにうってつけの対象。唯一の問題は,見かけの広がりが大きいため,研究に必要な領域を十分にカバーできる望遠鏡がほとんどないこと。
今回,すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ Hyper Suprime-Cam(HSC)の,高感度,高解像度,そして広視野の組み合わせによって撮られた銀河の形が,ダークマターの存在によってごくわずかに歪められる影響(弱重力レンズ効果)を精密測定してその分布を調べ,銀河団から延びるダークマターの姿を初めて捉えることに貢献した。
研究グループは,宇宙の大規模構造を形作るダークマターの網目状の分布が,これほどの規模で検出されたのは初めてのことであり,宇宙の標準理論を検証する上で、重要な観測成果だとしている。