物質・材料研究機構(NIMS)は,太陽光に対して20%以上の光電変換効率を維持しながら,60℃の高温雰囲気下で1000時間以上の連続発電に耐えるペロブスカイト太陽電池(1cm角)を開発した(ニュースリリース)。
太陽電池は20~30年間,安全に安定して発電し続ける必要があるが,ペロブスカイトは水分との反応により劣化しやすく,太陽電池として高い光電変換効率と長期耐久性の両立が課題となっている。
研究グループは,ペロブスカイト太陽電池の実用化の大きな課題である長期信頼性の欠如を克服する目的で,60℃の高温条件下において1,000時間の連続発電するペロブスカイト太陽電池を開発した。
この研究のペロブスカイト太陽電池は,光照射側から,TCO付ガラス,正孔輸送層,厚さ400nmの三次元構造であるFA0.84Cs0.12Rb0.04PbI3ペロブスカイト層,電子輸送層(フラーレン,C60),緩衝層,銀電極の順で積層されている。
ペロブスカイトのAサイトに長鎖アルキル基やフェニル基などを有するアミンやジアミン化合物などの有機アミン類を導入することにより,半導体層(ペロブスカイト)と絶縁層(有機アミン類)が交互に重なり合った二次元(2D)ペロブスカイトができる。
2Dペロブスカイトは疎水性の絶縁層が結晶内部に存在するため外気中(水や酸素)で安定に存在することが知られている。一方で2Dペロブスカイトの半導体層で発生した電子と正孔は絶縁層を跨いで移動することが難しいため,ナノメートルサイズの小さな結晶粒として,3Dペロブスカイト層と電子輸送層の界面に導入することにより,ペロブスカイト太陽電池の耐久性が向上すると考えた。
ペロブスカイトと電子輸送層の界面に,一般的に知られている1,4-フェニレンジアミンの二よう化水素酸塩(PEDAI)を用いた2Dペロブスカイトと,ピペラジンの二よう化水素酸塩(PZDI)に置き換えた場合を比較した。
その結果,ペロブスカイト表面との相互作用の強さ,2Dペロブスカイト結晶粒の形成しやすさ,2D構造,2D結晶粒のサイズなどに依存して,PZDIの2D結晶粒が界面に導入されるとより高い発電効率とより高い耐久性を示すことがわかった。
研究グループは,今後ペロブスカイト太陽電池の高効率化や高耐久化とともに,屋内(疑似太陽光照射)とともに(実際の太陽光を照射する)屋外試験を行ないながら,加速試験の方法の確立を進めるとしている。