光科学技術研究振興財団は,独自に独創的な研究業績をあげ日本の光科学の基礎研究や光科学技術の発展に貢献したと認められる研究者を顕彰する「第6回晝馬輝夫 光科学賞」の受賞者および「令和5年度研究助成」の採択者を決定した(財団HP)。
同財団の設立発起人で浜松ホトニクスの創業者の一人でもある晝馬輝夫氏は,光科学技術の重要性をいち早く見抜き,多様な光検出器などを提唱,実現することで光科学技術分野の発展に貢献した。
同財団は,光科学技術の高度化に寄与するため,その功績を記念した「晝馬輝夫 光科学賞」により秀でた研究者を顕彰するとともに,募集テーマに沿った研究に資金を助成する「研究助成事業」を行なっている。
今回,7名の候補者の中から「小澤知己 東北大学材料科学高等研究所 准教授(理化学研究所 客員研究員 兼務)」を「第6回晝馬輝夫 光科学賞」の受賞者に決定した。
授賞理由は「トポロジカル・フォトニクスにおける人工次元等の理論的提唱とその実証」。トポロジカル・フォトニクスとは,物質の状態の数学的形状(トポロジー)の概念を適用して,周期構造中の光子が示す性質を扱う分野であり,近年,この分野の研究が大きな発展を見せている。
同氏は,トポロジカル・フォトニクスにおいて,新概念の提唱やデバイス応用の提案という理論研究に加え,国内外の実験グループとの共同研究を通じて,分野を牽引する貢献をしてきた。
同氏の功績の最たるものは「人工次元」の導入。同氏は「次元」という概念は空間の三つの方向だけではなく,光の周波数や角運動量,位相などの自由度を新たな人工的な次元と考えることができるとした。
また,この概念を応用し極めて小型の光アイソレータを実現する方法を2016年に提案した。なお,人工次元については,2022年に同氏と国内大学の実験グループによりシリコンチップ上で実証されている。
以上から,同財団は「晝馬輝夫 光科学賞」の授与を決定した。同氏には顕彰として,賞状楯,賞牌,副賞500万円が贈られる。
今回「令和5年度研究助成」の採択者26名も決定した。贈呈式は3月5日(火),ホテルクラウンパレス浜松(静岡県浜松市)にて執り行なわれる。贈呈式では,小澤氏の受賞講演および令和3年度研究助成の成果報告講演を開催するとしている。