関西学院大学,堀場テクノサービス,深田地質研究所,名古屋大学は,共同研究論文「MCR法とCLS法を組み合わせたラマンイメージングによる巨大球状ドロマイトコンクリーション中の成分の可視化と同定」を発表した(ニュースリリース)。
球状コンクリーションは,地層の中に時折認められる硬い球状の塊。これらは砕屑性の砂や泥の粒子の間を炭酸カルシウム等の鉱物が充填しており,その中には保存状態が良好な化石が含まれている。
球状コンクリーションの成因については最近の研究により,化石の元となった生物起源の炭素成分と,海水中のカルシウムイオンの反応によると考えられ,その形成スピードは直径数センチメートルのもので数週間〜数ヶ月と,従来考えられていたよりもかなり速いことが分かってきた。
また,2023 年にコンクリーションに含まれる鉱物のアパタイトについて,顕微ラマン分光法を用いて分析を行ない,アパタイトが生物起源である直接的な証拠が得られている。
この研究では愛知県知多半島に分布する中新世師崎層群の地層に含まれる直径1.7mの巨大球状コンクリーションについて,ラマンイメージングと多変量スペクトル分解法(MCR)ならびに古典的最小二乗法(CLS)を駆使して分析を行ない,構成する物質を同定するとともに,起源となった生物の有機物が残存していることを発見した。このような発見は世界初。
またこのことは,巨大コンクリーションが生物有機物起源であることの直接的な証拠となる。つまり,コンクリーションは有機物が分解されるよりも速く形成したと考えられ,これは形成速度が非常に速いという新学説を裏付ける重要な結果。
さらにコンクリーション化に伴う炭酸塩のシーリング効果により,形成後の地下2kmもの埋没等による熱や圧力の影響を受けても内部の物質変化は抑制され,当時の状態を1000万年以上も保存できるということも明らかとなった。
このことは,コンクリーション化によるシーリング効果(形成後の風化や変質といった様々な現象から隔離させる効果)が非常に高いことを示すものであり,現在開発が進められているコンクリーション化剤の長期シーリング効果の説明としても役立つもの。
研究グループは,今回の成果について岩石をはじめとした様々な地球環境物質の成因解析にも応用することができるとしている。