理研,タフな蛍光性自己修復材料の開発に成功

理化学研究所(理研)は,希土類金属触媒を用いて,発光ユニットを組み込んだモノマーとアニシルプロピレンとエチレンとの三元共重合を行なうことにより,高い蛍光量子収率で発光し,画像の転写も可能な自己修復性材料の開発に成功した(ニュースリリース)。

発光特性など多様な機能を発現する自己修復性材料の開発は,これまで機械物性や自己修復性が不十分であり,タフで優れた蛍光特性を示すものは開発されていなかった。

研究グループは,発光ユニットとしてスチリルピレン基を組み込んだモノマーとアニシルプロピレンとエチレンとの三元共重合を行なうことにより,1段階の反応で比較的高分子量の共重合体を得ることに成功した。

構造解析の結果,この共重合体は,アニシルプロピレンとエチレンとの交互ユニットに加え,エチレン-エチレン連鎖の他,スチリルピレンがエチレン連鎖の間に孤立した形で取り込まれた構造であることが分かった。

得られた共重合体は,伸び率約1,300%,破断強度約4MPaと優れたエラストマー物性を示すだけではなく,外部から一切の刺激やエネルギーを加えなくても自己修復することができる。

自己修復性を引張試験で評価したところ,24時間で引っ張り強度が完全に回復し,アニシルプロピレンとエチレンの二元共重合体の自己修復時間(5日間)と比べて,自己修復速度が向上した。また,大気中と比較すると遅いものの,水,酸やアルカリ性水溶液中でも自己修復する。

得られた共重合体を有機溶媒に溶かして紫外線を照射すると,強く蛍光発光することが分かった。溶液中では,最高で87%と高い蛍光量子収率を示し,フィルム状態でも40%と比較的高い量子収率を示した。

濃度が高くなるにつれて,蛍光波長が418nmから471nmへと長波長側にシフトしていることから,スチリルピレンユニット間で分子間相互作用があることが明らかとなった。

また,この共重合体に波長405nmの光を照射すると,スチリルピレン基内の炭素―炭素二重結合の[2+2]環化付加が進行するとともに蛍光強度が減少し,波長365nmの光を照射するとある程度逆反応が進行することを明らかにした。

さらに,[2+2]環化付加による発光特性の違いを活用したフォトリソグラフィーによって,蛍光発光自己修復性フィルム表面に二次元画像を転写させることに成功した。フィルムは,優れた自己修復性およびエラストマー物性を示した。

研究グループは,今回開発した材料は,さまざまな環境下で自己修復可能かつ実用性の高い新規機能性材料の開発に大きく貢献すると期待できるとしている。

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