東京大学の研究グループは,超短パルスレーザーから数十ピコ〜数ナノ秒のパルス間隔を持つギガヘルツ繰り返し(GHzバースト)パルスを生成し,各パルスの形状を個別に操作可能な手法「Spectrum shuttle(スペクトラムシャトル)」を開発した(ニュースリリース)。
超短パルスレーザーからのバーストパルスの生成は,超高速撮影やレーザー加工において重要だが,GHz領域への展開や各パルスの形状操作において,既存手法では原理的な限界があった。
研究グループは,自由空間内において,超短パルスから,個別に形状を操作可能なGHzバーストパルスを生成する光要素技術「Spectrum shuttle」を開発した。この手法では,2つの回折格子により分散平行光となった超短パルスが,3次元的な傾斜を持つ平行なミラーペアにより,色ごとに空間的に分離する。
各色のパルス形状は空間光変調器によりそれぞれ操作され,元の光路を戻ってビームスプリッタにより取り出される。この時,各色はミラーペア間の往復回数が異なるため,往復回数に応じた時間差が生じる。これにより,各パルスの色と形状が異なり,ミラーペア間の距離に応じたパルス間隔を持つ,GHzバーストパルスを生成できる。
研究では,Spectrum shuttleを用いて,色が離散化されたGHzバーストパルスを生成した。また形状操作の例として,パルスの位置操作及びピークの分割を実証した。
さらに,Spectrum shuttleを用いて,波長800nm帯域と波長400nm帯域という2つの大きく異なる色の範囲においてGHzバーストパルスを生成し,2色での超高速分光イメージングに成功した。超短パルスレーザーを用いたレーザー加工では,ガラスへの強い光の集光によりアブレーションが生じ,プラズマと衝撃波のダイナミクスが進展する。
この超高速かつ繰り返し起こらない現象を,波長800nm帯域と波長400nm帯域で同時に超高速撮影を行なうことで,250ピコ秒間隔という超スローモーションの撮影像を取得した。さらに,波長800nm帯域と波長400nm帯域のそれぞれで取得された像の見え方の違いから,生じている現象の詳細な解析を実現した。
研究グループは,この手法は,サブナノ〜ナノ秒現象を可視化する超高速撮影や,レーザー加工や音響波生成におけるレーザーアブレーションの制御など,幅広い光学技術への応用が期待されるとしている。