東北大学,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO),沖電気工業(OKI)は,光インターネットサービスで採用されるパッシブ光ネットワーク(PON)システムを効率よく運用することを目的に,必要な通信量を人工知能(AI)で予測して効率よく資源を割り当てる「仮想化資源制御技術」を開発した(ニュースリリース)。
2030年ごろに見込まれる第6世代移動通信システム(6G)では,基地局に設置が必要なアンテナ(セル)数が一層増大すると予想される。これまで基地局からセルへの光配線はPoint-to-Point方式で接続していたが,ポスト5G以降,同じ方法で敷設を行なった場合,光ファイバーの本数が爆発的に増え,運用コストが高騰し消費電力も増大する。
こうした中,OKIと東北大学はOSSをベースとした仮想PONシステムの構築や資源の割り当て,AIによる最適資源予測技術の開発などに取り組んできた。
今回,OKIはPONシステムに適応して駆動する資源制御技術の開発として,XGS-PONをベースに異なる2波長(10Gb/s×2)を使用した仮想PONシステムの構築と,ネットワーク機器オープン化の業界団体ONFで規定されるアクセス向けOSSのONOS/VOLTHAに波長/時間の帯域資源によるスライスを割り当てる機能の構築を行なった。
東北大学は,トラフィックのAI予測技術の開発として,イタリアテレコムのオープンデータを用い,時系列データの予測によく用いるロング・ショートターム・メモリー(LSTM)を使った学習と,複数エリアを演算することでメモリー使用率の低減に向けた予測・実装を行なった。
この結果,ONUが送受信する波長を切り替えることでOLTへの収容を変更でき,1波長あたり10Gb/sの通信量をまかなえる。実証実験では2波長(20Gb/s)を実装し,総トラフィックのしきい値を8Gb/sとすることで,AI予測の結果がしきい値以下の時は1波長ですべてのONUを収容し,しきい値以上の時は2波長でONUを収容できるように波長資源を制御し,資源の割り当てを変更することに成功した。
この技術の効果を消費電力に置き換えた場合,既存方式と比べて20%以上の削減が期待できる。また,既存のPONで使用される通信局側のOLTの消費電力はポートあたり年間約8.8kWhとされており,この技術の活用によって年間約1.8kWh以上の削減が期待できるという。
研究グループは,ONUやアンテナ側のスリープ制御も含めると,さらなる消費電力の削減が見込めることから,カーボンニュートラルの実現への貢献が期待されるとしている。