筑波大ら,カラーイメージング法で流体混合を計測

筑波大学と工学院大学は,空間に浮上,合体させた2つの液滴内の流れと流体分布の両方を,蛍光発光粒子を用いて可視化する計測技術を開発した(ニュースリリース)。

液体を持ち運ぶとき,瓶やコップなどの容器を用いるが,容器に付着した物質による液体の汚染や,壁面を基点として生じる融解や固化などの現象が,しばしば結果に大きな影響を与える。

そこで,容器を用いないLab-on-a-dropと呼ばれる超小型試験環境がある。これは,超音波の力で粒状の液体を浮かせる超音波浮遊法により実現することができる。

Lab-on-a-dropは,空中で自在に液滴の注入,浮遊,輸送,合体,蒸発,回収ができる可能性を秘めており,容器の影響を受けない試験の実施や,新しい材料の創出が期待されている。

しかし,μLサイズの液滴はレイノルズ数が小さいため,液体同士を均一に混ぜることは容易ではない。また,浮遊液滴の内部の流動と混合メカニズムの関係については十分に理解されていなかった。

研究グループは,超音波フェーズドアレイを用いて液滴浮遊を実現した。7×7に配列した超音波振動子から位相が制御された40kHzの音波を発信すると,任意の位置に音の焦点を発生させることができ,各振動子の位相を500Hzの周波数で切り替えることで,同一種類の液滴2つをそれぞれ浮かせることに成功した。

液滴内部の流れ場と濃度場を可視化するために,一方の液滴には紫外線により赤く蛍光するアクリル粒子を,もう一方の粒子には同様に緑に蛍光するアクリル粒子を,それぞれ同じ粒子濃度で混入させた。これに紫外線シートレーザーを照射し,各液滴成分の流れと混合の様子を高速度カメラで撮影して詳細に調べた。

液体の分子サイズよりも数桁大きい直径10μmの蛍光粒子を用い,液滴が合体した際の混合ダイナミクスを分析した。動粘度の異なる3種類の液体について,液滴の混合に要する時間スケールtmcを実験的に求め,粒子の拡散に要する時間スケールttrと流体の粘性散逸の時間スケールとを比較した結果,tmcとttr の間に強い相関があることを見いだした。

特に,動粘度の低い液滴では運動量移動が促進され,内部流れの影響によりtmcが短縮していた。今回検討したすべての液体において,液滴中の蛍光粒子の混合,すなわち,2つの液滴の混合が,液滴の合体から生じる内部流によって促進されたことが明らかになった。

研究グループは,混合をより促進させるための適切な手段を確立し,Lab-on-a-dropシステムの応用とさらなる開発に役立つことが期待されるとしている。

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