三重大学と名城大学は,高光出力の深紫外LEDや深紫外半導体レーザーを実現するために不可欠である,縦型AlGaN系深紫外半導体レーザーの開発において,半導体プロセスに導入しやすい加熱・加圧した水で基板剥離する技術を開発し,その基板剥離メカニズムも解明した。(ニュースリリース)。
AlGaN系深紫外LEDや半導体レーザーの開発において,絶縁性基板からデバイスを剥離する技術には,同じ材料系のGaNに対しては広く使用されているレーザーリフトオフ法があるが,AlGaN系ではレーザーにより析出したアルミニウムの融点が高いため,安定な剥離が難しいという問題があった。
研究グループは,AlNをナノインプリント法により規則的に配置したパターンマスクを形成し,それをプラズマエッチングして周期的に配置されたAlNナノピラーを生成し,それの上にAlGaN を成長させる技術を開発した。
このAlGaNは高品質の結晶であり,UV-B領域の半導体レーザーなどに応用されている。この研究では,AlNナノピラーを用いたAlGaNを,1.5気圧・135℃で加圧・加熱した水を使用して剥離する方法が可能であることを示した。
走査電子顕微鏡を用いて解析したところデバイスのサイドに相当するm面やa面のAlNやAlGaNは加圧・加熱した水によりエッチングされる。一方,デバイス表面に相当する+c面に関しては走査電子顕微鏡では全く反応は確認されなかった。
さらに試料表面の化学的な反応を原子レベルで解析することができるX線光電子分光法による詳細な分析により,+c面は加圧・加熱した水には反応しないことが解明された。
つまり,デバイスの表面から水が結晶にほとんど影響を与えないにも関わらず,サファイア基板を剥離することが可能であることが明らかになった。
さらに,この手法は半導体プロセスで一般的に使用される水による洗浄を利用しており,プロセス温度は通常の半導体プロセスよりも低温(約135℃)で行なえるため,高い汎用性があることも確認された。
研究グループは,縦型AlGaN系深紫外LEDや半導体レーザーは,デバイス・サイズを大きくしても均一に電流を流すことができ,1素子から1ワットを超える極めて高出力なレーザー光を得ることが期待できるとしている。