名工大ら,発蛍光型の乳酸センサー不織布を開発

名古屋工業大学と東京大学は,乳酸の結合で蛍光強度を大きく上昇させる蛍光センサー蛋白質eLACCO1.1を,分子量依存的な分子浸透性を持つ電界不織布のナノ繊維内部に固定化することで,乳酸に対する発蛍光型の蛍光センサー不織布の開発に成功した(ニュースリリース)。

一般に生体サンプルには様々なイオンや生体分子が共存しており,その中から効率的に特定の分子を定量評価するためには,タンパク質の持つ高い分子識別能を生かした蛋白質ベースのセンサー分子の利用が合理的。

しかし,タンパク質であるが故の,耐久性の悪さ,外部環境変化に対する脆さが足枷となり,高度な分子識別能を持つタンパク質ベースのセンサー分子を活かしたセンサー材料開発はあまり進んでいない。

研究グループは,ナノ繊維内部を,蛍光センサー蛋白質を働かせる場として利用する検討を行なった。電界不織布作製に利用可能な新たな高分子材料として,生体毒性の低い高分子バイオマテリアルとして知られるポリ(2-ヒドロキシプロピルメタクリルアミド)ベースとした高分子材料poly(HPMA/DAMA)を開発し,ここに乳酸の結合により蛍光強度を大きく上昇させる蛍光センサー蛋白質eLACCO1.1を添加し電界紡糸を行なうことで,乳酸センサー不織布の作製を行なった。なお不織布への材料強度付与のため,ナノ繊維表面はNylon6でナノ被覆したものを用いた。

作製された乳酸センサー不織布は,乳酸濃度の上昇,下降に応じた可逆的な蛍光強度変化を示し,その強度変化は高い再現性を示した。またこの応答性は,プロテアーゼの処理後でも全く影響を受けず,不織布繊維の持つ分子量依存的な分子浸透性の効果により,eLACCO1.1がプロテアーゼ分解から保護されつつ,乳酸に対する特異的なセンサー機能は維持可能となることがわかった。

この性質は,体調や疾病のバイオマーカーとして注目される乳酸の濃度を,様々な夾雑物を含む生体サンプル(尿,汗,血液など)から簡便に定量評価可能な要素技術として,非常に魅力的な要素を兼ね備えているといいう。

現在様々な生体分子に対するセンサー蛍光蛋白質の開発が世界的に進められており,研究グループは,今回検討を行なった特殊な高分子部材から作製可能な電界不織布は,様々な夾雑物を含む生体サンプルに様々なセンサー蛍光蛋白質を直接作用させることが可能な場として,有効に機能すると期待されるとしている。

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