名城大学,三重大学,ウシオ電機,西進商事は,高光出力深紫外半導体レーザー実現に必要不可欠である縦型AlGaN系深紫外(UV-B)半導体レーザーを開発した(ニュースリリース)。
半導体レーザーの光出力は,その効率と注入電流に依存する。デバイスへの電流注入を増加させるには,デバイスのサイズを大きくする必要があるが,現在のAlGaN系紫外半導体レーザーは,高品質の結晶を確保するためにサファイアやAlNなどの絶縁材料を使用しており,デバイス内で薄膜のn型AlGaNを横方向に電流が流れる横型デバイスのため,電流を均一に流すことが難しく,したがって大型化しても注入電流を増加させることが困難。
縦型AlGaN系深紫外半導体レーザーを実現するためには,①絶縁性の基板を剥離する技術の開発,②半導体プロセスの開発,および③光共振器の形成技術の3つの技術革新が必要だった。研究グループは,3つのブレークスルーによってその実現に成功した。
①絶縁性の基板を剥離する技術は,固体パルスレーザーを使用してAlNとAlGaN界面の結晶を分解し,デバイス構造のみを剥離する手法,GaN系青色LEDで広く使用されるレーザーリフトオフ法を開発した。しかし,AlGaNではAlドロップレットが形成され,これが結晶の破壊を引き起こす致命的な欠点があった。
そこで研究グループはAlNナノピラーを使用し,パルス固体レーザーを採用することで,この課題を克服し,再現性の高い絶縁性のサファイアおよびAlNの剥離する技術の開発とそのメカニズムの解明に成功した。
②半導体プロセスの開発に関しては,電極や絶縁層,電流狭窄構造などを設計通りに製造する技術を開発し,レーザー発振に必要なデバイス構造の実現に成功した。
③光共振器の形成技術については,ブレードを用いたへき開法を開発し,優れた光共振器を形成した。
これらの技術を結集して作製した縦型AlGaN系深紫外半導体レーザーは,室温・パルス駆動で動作させると,非常に鋭い発光スペクトル,TE偏光特性,スポット状の発光パターン,そしてしきい値電流の確認など,レーザー特有の特性を示すことを確認した。
この結果から,作製した縦型AlGaN系深紫外半導体レーザーは波長298.1nmのUV-B領域に相当する深紫外レーザー光を放射することを確認した。
縦型AlGaN系深紫外半導体レーザーはデバイス・サイズを大きくしても均一に電流を流すことができるため,1素子から1Wを超えるレーザーが期待できる。研究グループはこれらを集積化することにより数十W~数百Wの超小型レーザー光源が期待できるとしている。