日本電信電話(NTT)は,フィールド敷設4コアファイバを用いて,世界初となるファイバ1心で1.6Tb/sを超える強度変調直接検波(IM-DD)方式による光信号の空間多重光伝送実験に成功した(ニュースリリース)。
1.6Tb/sの大容量イーサネットの実現には,既存の規格における伝送距離を維持しつつ1レーンあたり400Gb/sへ高速化し,1つのファイバかつ少ないレーン数(4レーン)で並列伝送する必要がある。
今回,同社で開発したInP HBT技術による超広帯域ベースバンド増幅器ICモジュールと,受信側での非線形最尤系列推定により,1レーンあたり400Gb/sの超高速IM-DD信号の送受信が可能となった。
これを1.6Tb/sの信号とするには,400Gb/sの超高速IM-DD信号を4並列に伝送する必要がある。光ファイバ伝送路中では,波長分散等による信号波形歪みの影響が高速な信号ほど顕著に現れるため,従来のWDM方式では,光ファイバ1本で1レーンあたり400Gb/sの信号を,4並列に10km伝送することは困難だった。
同社はマルチコアファイバを用いた空間多重方式を採用することにより,この課題を解決した。具体的には各コアに1波長を割り当てることで,4コアの各コアごとに波長分散の影響を受けにくい波長に設定することを可能とした。
さらに,光信号形式を従来の4値(PAM4)から8値(PAM8)に高度化することでシンボル速度を3/4倍に低減し,合わせて非線形最尤系列推定信号処理を適用することで,波長分散等による信号波形歪みを大幅に低減した。
また,この実験で用いたマルチコアファイバは,同社研究所内の地下設備に4コアファイバケーブルを敷設することで,実際のケーブル敷設環境を模擬した。
この4コアファイバは,既存のファイバと同じクラッド外径(125µm)を採用し,各コアは既存のファイバと同じ簡易なステップインデックス型の屈折率構造としているため,量産化に適した構造としている。
各コアの光学的な特性は,現在の光ファイバの国際規格と同等の光学特性を有し,個別のファイバを用いたPSM方式に比べて各コアの特性ばらつきを低減できた。さらに,10km伝送時における各コア間のクロストーク(は,IM-DD方式が用いられるイーサネット標準の1.3µm波長帯域(O帯)において約10万分の1であり,光信号伝送に全く影響が出ないレベルに低減できた。
同社はこの技術を用いることで,従来の実用レベルの4倍以上となる,1ファイバあたり1.6Tb/sを超えるイーサネット信号を高信頼に伝送することが期待されるとしている。