矢野経済研究所は,車載用ディスプレー世界市場を調査し,タイプ別や部位別,インチ別,純正・市販品別の市場動向(数量,金額),メーカー動向,価格動向,採用動向,将来展望を明らかにした(ニュースリリース)。
それによると,2023年の車載用ディスプレー世界市場(事業者売上高ベース)は前年比103.8%の93.2億ドルと予測した。
車載用ディスプレーは,コックピットの全幅に広がるPillar to Pillar Display等の大型ディスプレーや,複数情報がデジタル表示されるDigital Cockpit向けに従来のLCDに比べて高輝度なMini LED Display「Direct LED(BLU)」,高コントラストで映り込みを抑制するAG/LR反射フィルム,インセル(内蔵)型タッチパネル等を採用した高い付加価値を持つ車載用ディスプレーの搭載が増加している。
さらに,12インチ以上の大型やAMOLEDパネル等高単価な車載用ディスプレーの採用拡大により,車載用ディスプレー世界市場は順調に拡大していくと予測した。
OEM(自動車メーカー)やTier1(一次部品サプライヤ)が,車載用ディスプレーとしてのAMOLEDパネルに求めるニーズは,従来のLCDパネルより高級感を出せるディスプレーに変化したという。
それにより,今回の調査で注目したAMOLEDパネルは曲面などのフレキシブル性を実現するPlastic基板ベースから,リジッド基板をベースとするガラスタイプの採用が本格化している。
ガラスタイプの採用拡大により,AMOLEDパネルは課題であった高単価を克服し,単価ダウンが期待できるとしている。今後,AMOLEDパネルの採用でコックピットの差別化を図るOEMが増加し,車載用AMOLEDパネルは車載用ディスプレー市場にとっての新たな成長の原動力になると予測する。
2031年の車載用ディスプレー世界市場は153.0億ドルになると予測。欧州でもEV生産が本格化した2023年には,Digital Cockpitのデザイン過渡期を迎えている。
ディスプレー関連メーカーはPillar to Pillar Display向けの高付加価値な車載用ディスプレーに注目しており,15インチ前後と20~30インチ台のLong Displayを組み合わせた新たなコックピットデザインの開発が進展しているという。
また,高級感を出せるAMOLEDパネルのほかにも,欧州を中心に視野角を制御したプライバシーモード機能付き車載用ディスプレーのニーズも拡大しており,付加価値をつけた車載用ディスプレーの展開が注目されている。
車載用ディスプレー世界市場は数量から質を追う時代に突入しており,ディスプレー関連メーカーが追うべきは,一枚当たりの単価が民生用ディスプレーを超える車載用ディスプレー開発のための技術革新であるとしている。