順天堂大学の研究グループは,最新技術である免疫高精度光線-電子相関顕微鏡法を用いて神経セロイドリポフスチン症モデルマウスにおける,神経変性発症時の神経細胞の脱落,それに伴い活性化するミクログリア,アストロサイトの超微形態変化を捉えることに成功した(ニュースリリース)。
神経変性疾患を引き起こす神経セロイドリポフスチン症モデルマウスは,オートファジー・リソソーム分解系に関わるカテプシンDが欠損しており,神経セロイドリポフスチン症患者と同様の表現型を示す世界で唯一のモデルマウス。
このマウスでは,神経細胞の脱落とともに活性化したミクログリアやアストロサイトが増加するが,その内でどのような変化・異常が起こっているのかは良くわかっていなかった。
研究グループは,これまで神経セロイドリポフスチン症モデルマウスを用いて,神経変性疾患におけるオートファジー・リソソーム分解系の影響を解析してきた。
このモデルマウスの中枢神経組織には自家蛍光を発するセロイドリポフスチンが蓄積しており,変性した神経細胞においてGROD(granular osmiophilic deposits)と呼ばれる異常なリソソームやオートファジー小胞の蓄積が認められる。
このマウス脳の視床では生後24日で,神経細胞の数が約半分に減少するとともに,活性化ミクログリアは約2.5倍,活性化アストロサイトは約4.6倍に増加していた。
そこで,研究グループは,抗原抗体反応を樹脂包埋した超薄切片に適用して,超薄切片を用いて電子顕微鏡像と蛍光顕微鏡像を得る方法である免疫高精度光線-電子相関顕微鏡法を用いて,このマウス視床における活性化ミクログリア・アストロサイトの超微形態変化を解析した。
その結果,神経セロイドリポフスチン症モデルマウスにおける,神経変性発症時の神経細胞の脱落,それに伴い活性化するミクログリア,アストロサイトの超微形態変化を捉えることに成功し,これまでに明らかにされてこなかったミクログリアに取り込まれたTUNEL陽性の構造体やリソソーム内の異常蓄積物,アストロサイトにみられるp62陽性構造体を明らかにした。
研究グループは今後,この解析技術を用いて神経変性以外の病態モデルマウスについても研究を行ない,多くの疾患の病因解明へ貢献するとしている。