鹿児島大学は,超新星SN 2023ixfの分光観測および近赤外線観測を実施し,超新星を引き起こす星の進化に知見を得た(ニュースリリース)。
近年,重力崩壊型超新星の分光観測によってスペクトルに水素などの元素の強い輝線が発見された。これは星周ガスと呼ばれる,星のごく近くを取り巻くガスが存在することを意味する。恒星が爆発直前に活動的となり,ガスを噴出することで形成されると考えられる。
その後,いくつかの超新星で輝線が観測されたが,サンプルが乏しく星周ガスの詳細な性質は理解が進んでいない。特に,星周ガスの組成には多様性が認められるのか,どのような超新星がどのような星周ガスを持つのか,といったことが明らかになっていない。
超新星の多くは暗いため,口径2-8mの大型望遠鏡が使われるケースがほとんどだった。これらの望遠鏡はユーザーである研究者が多く,アクセスできる時間が限られる。より小さな望遠鏡でも観測できる明るい超新星の出現が待たれていた。
研究グループは,太陽系からわずか2100万光年先にある渦巻銀河M101に超新星SN 2023ixfを発見した情報を掴み,アマチュア天文家が40cm望遠鏡に搭載された自作の分光器でスペクトルの取得を開始した。得られたスペクトルはとても精度が高いもので,十分に天文学的な研究調査が可能だった。
そのスペクトルには強い輝線とともに青い連続光と呼ばれる特徴が見られ,初期段階の重力崩壊型超新星に合致していた。これは,SN2023ixfが21世紀以降で見かけの上では最も明るい重力崩壊型超新星であることを意味する。
まず,研究グループはこのスペクトルを使って水素の輝線を調査した。その結果,水素の輝線は2つの成分に分けられることを見出した。それぞれ,超新星そのものの膨張ガスと取り巻いていた星周ガスに対応する。さらに,スペクトルにはヘリウムや炭素,窒素などの輝線も存在することを明らかにした。
さらに,これまでの星周ガスを持つ超新星サンプルを集め比較検討を行なった。その結果,特に,炭素と窒素をスペクトルに示さない超新星に比べ,窒素などを豊富に有している可能性が示唆された。
また研究グループは,1m望遠鏡を使って近赤外線観測を開始し,超新星の光度と輝線として見える元素には関係性がある可能性を発見した。
理論的には,高い光度を持つ超新星は親星の初期質量も大きいことが予期され,研究グループは,今後は,星の質量と星周ガスの元素との関係性に焦点を当てた理論研究が進むことが期待されるとしている。
また,この超新星は12等台と見かけの等級で明るい状態を保っており,様々な研究が遂行されるとしている。