名古屋大学の研究グループは,手術・放射線・化学療法・がん免疫療法に続く第5のがん治療といわれる近赤外光線免疫療法の効果を予測する新たな画像評価技術開発に成功した(ニュースリリース)。
近赤外光線免疫療法は新規がん治療法として期待されているが,光の照射が不十分だと治療効果が減少してしまうため,改めて追加治療が必要になったり,再発したりする可能性がある。
光は組織内で反射や散乱により減衰することで均一な照射が困難なため,光照射の完遂を適切に判断できる指標が求められていた。
加えて,施術の場で光照射が適切に行なわれているかを判断できれば,必要に応じて追加の光照射がその場で可能となり,患者へのメリットが大きいと考えられる。そのため,光照射施術中,ないしは施術直後に光照射が適切かどうかを判断できる技術開発が求められていた。
近赤外光線免疫療法で治療した腫瘍は,約20-200nm程度の粒子の集積・滞留効果であるEPR効果が増大しており,超EPR効果(SUPR効果)と名付けられている。従来,腫瘍におけるEPR効果はナノサイズの粒子に限られ,約20nm-200nmのサイズの粒子が腫瘍に滞留することが知られている。このEPR効果を応用した抗がん剤は既に治療で使われている。
研究グループは,蛍光ナノ粒子である800nm量子ドット(20-30nm)が近赤外光線免疫療法で治療した腫瘍にSUPR効果で集積することを確認した。治療した腫瘍を透明化する技術を用いて透明化したところ血管領域の拡大が3D画像解析で証明された。
このことから,より大きなサイズの粒子が滞留する可能性を仮説とし,2µm,5µmサイズの蛍光粒子で検討し,どちらのサイズでも滞留性が上昇することを新規に発見した。また,この滞留性が高いほど近赤外光線免疫療法の抗腫瘍効果が高いことを見出した。
[マイクロサイズ超EPR効果]概念は新規のもので,この機構を応用して,2µmのサイズであるマイクロバブルの滞留性を超音波画像検査で評価する新技術に結びつけた。マイクロバブルの滞留性が大きいほど,近赤外光線免疫療法の治療効果が高く,この簡便な方法で光照射後すぐに治療効果の程度が推定できることがわかった。
研究グループは,この評価技術のさらなる最適化を進めるとともに,臨床試験への移行に向けた基礎検討,非臨床試験を実施することで,近赤外光線免疫療法のより適切な治療の実施とその効果の上昇が期待できるとしている。