東工大,共有結合性有機構造体を温和に合成・薄膜化

東京工業大学は,多孔質材料である共有結合性有機構造体(Covalent Organic Framework:COF)を電気化学的に合成すると同時に電極表面に固定化する手法を開発した(ニュースリリース)。

COFは,有機分子からなるモノマー同士の共有結合により形成される二次元もしくは三次元状の結晶性材料。軽元素で構成されるため軽量であることに加え,規則的に分子が配列した多孔質構造由来の大きな表面積を有している。

特にイミン結合からなるCOFは,モノマーの種類が豊富であることに加え,熱的・化学的安定性に優れるため,ガスの吸着・分離材料や触媒,電極材料などへの応用が期待されている。しかし,温和な合成条件で電極上にCOF膜を簡便に作製することは困難で,その厚みや形状制御も実現していなかった。

電解質および1,2-diphenylhydrazine(DPH)を含む電解液に板状電極を浸し,常温・常圧条件下で電位を印加することにより,電極近傍においてDPHの酸化反応が進行する。酸化反応に伴い速やかにプロトンが放出され,このプロトンが電解発生酸として機能する。

研究グループは,実際に指示薬存在下において電解発生酸を発生させたところ,電極近傍のみが局所的に呈色したことから,酸の発生を時空間的に制御できることがわかった。

次に,COFの原料であるアミンモノマーとアルデヒドモノマーおよびDPHを含む電解液に電極を浸し,電位を印加したところ,電解発生酸が触媒として縮合反応が進行し,モノマーの重合体であるCOF膜が電極表面に析出した。

電位掃引のサイクル回数に応じてCOFの膜厚が増大したことから,電解発生酸の生成量を制御することにより,得られるCOF膜の厚みを制御できることがわかった。小角X線散乱測定や窒素ガス吸着測定により,得られたCOF膜は高い結晶性と多孔質構造を有していることが明らかとなった。

また,異なるアミンモノマーとアルデヒドモノマーの組み合わせにおいても相応するCOF膜を得ることに成功し,三次元状のCOF材料も合成可能だった。このように,この手法は温和な条件下で局所的に生じる電解発生酸を用いることにより,モノマーの重合と生成するCOF薄膜の電極表面への固定化を同時に達成する画期的な手法だとする。

研究で用いたCOFは,ゼオライトやメソポーラスシリカ,金属有機構造体(MOF)に次いで開発された比較的新しい多孔質材料。今回,軽量・安定性に優れるCOFの合成と薄膜化を一挙に達成できたことにより,研究グループは,応用研究が加速するとしている。

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