大阪大学の研究グループは,主星の周りを回らない浮遊惑星候補天体を6個発見し,その内1個が地球質量程度だった(ニュースリリース)。
重力マイクロレンズ現象は,遠方の恒星(背景天体)の前を他の星(レンズ天体)が通過すると,その重力が周りの空間を歪めて背景天体からの光を一時的に増光する現象で,唯一,主星の光に頼らずに,単独で存在する軽い惑星をその重力を介して検出できる。
惑星が形成されるとき,幾つかの惑星は他の惑星によって主星の重力圏外に弾き飛ばされ,浮遊惑星になると予想されており,これまでに数個の浮遊惑星候補が重力マイクロレンズによって発見されている。しかし,地球質量の様な軽い浮遊惑星は一個しか発見されておらず,それらの質量分布や存在量はわかっていなかった。
研究グループは,ニュージーランドの1.8mMOA-II望遠鏡を用いて,重力マイクロレンズ現象を用いた系外惑星,暗黒物質の探査を行なっている。マイクロレンズ現象は,レンズ天体が軽いほど増光期間が短くなる。通常の星の場合,増光期間は数週間から2ヶ月程度だが,0.5日以下の短いマイクロレンズ事象は,惑星質量である可能性が高くなるという。
研究では,MOAが2006~2014年までの9年間に観測したデータから6,111個のマイクロレンズ事象を発見し,一定の基準を満たす3,535個を選び出した。その内6個は増光期間が0.5日以下の浮遊惑星候補。
特にその内の1個MOA-9y-5919は,増光期間が0.06日と非常に短く,地球質量程度。これは,これまでに見つかった地球質量の浮遊惑星としては2例目。数時間という短い増光現象を検出できる確率は非常に低く,2例見つかったとで,地球質量の浮遊惑星がありふれた存在であることが示唆された。
浮遊惑星の存在量と質量分布を求めた結果,浮遊惑星は,地球質量の様に軽いものほど,より多く存在することがわかった。また,浮遊惑星は星1個に対して20個程度も存在することがわかった。
銀河系には約2千億個の恒星があると考えらるため,銀河系には1兆個以上もの浮遊惑星が存在すると見積もられる。これは,これまで見つかっている主星の周りを回る惑星より約6倍以上多い。また,主星周りの惑星と比べて,10地球質量以上では主星周りの惑星の方が多い一方で,それ以下の軽い惑星では,浮遊惑星の方が多いことがわかった。
この成果により,弾き飛ばされた惑星も含む,形成された全ての惑星の存在量を測定可能になる。研究グループは,これにより系外惑星の形成過程と進化,ひいては人類が住む太陽系や地球の起源の解明につながるとしている。