2023年FPD向け偏光板生産量,前年比107.9%に

矢野経済研究所は,2023年の偏光板及び部材フィルム世界市場を調査し,製品セグメント別の動向,将来展望を明らかにし,偏光板の世界生産量予測について公表した(ニュースリリース)。

それによると,2022年における偏光板の世界生産量は前年比81.3%の50,110万m2,LCDタイプ別にみるとLCD-TFT向けやAMOLED向けで生産量全体のうち99.0%を占めたと推計する。

2022年6月頃より,コロナ禍を背景とした巣ごもり需要によるディスプレー特需の終了,世界的なインフレ・景気悪化などで用途を問わずディスプレイー況が到来した結果,偏光板の世界生産量は大幅に減少した。

これまで,ディスプレーパネル大型化による偏光板の面積拡大効果は,偏光板や部材フィルムの生産量を下支えし,どんな不況期においてもディスプレーパネルの生産数量減少分を相殺するだけの力があった。しかし,今回はその効果が発揮されず,2022年の偏光板及び部材フィルム世界市場はマイナス成長となった。

また,市場では,こうした解決策のない外部要因に翻弄されたことに加えて,TVやIT系ディスプレー(モニター,ノートPC,タブレット等)製品の実需要に見合った生産ではなく,新設した生産ラインの稼働率低下を恐れたディスプレーパネルメーカーが生産を続けたことで在庫も山積みとなり,稼働率が急落するなどこの異常事態に拍車をかけたという。

偏光板世界市場では,2022年から中国系偏光板メーカーの生産ラインの新設が続いており,2022年下期からは値下げ攻勢で日系・韓国系・台湾系メーカーの受注分を獲得し,シェアを拡大しているとする。

2023年の偏光板世界生産量のメーカーシェアは,Shanjin(杉金光電)がトップシェアの28.9%,2023年に新ラインが稼働するHMO(恒美光電)もさらなる物量を確保し,シェア14.0%までの拡大を予測する。

2023年の偏光板世界市場は「価格が全て」となり,2023年下期からはこれら2社の新規物量がマーケットに溢れ,新ラインの稼働を埋めるためにも需要確保にさらに力を入れていくとみる。2023年も中国系偏光板メーカーを中心に,値下げ競争による物量の奪い合いが続く見通しだという。

これら2社にはまだ体力があるように見えるが,Shanjinが既に確保した物量は大きく,HMOによる今後のシェア拡大にはShanjinとの競合が避けられない構図となりつつあるため,Shanjinも今後影響を受ける可能性があるとしている。

2022年末には,ディスプレーパネルメーカーサイドではTV向けパネルの山積み在庫はある程度消化され,パネルの半製品・完成品在庫は通常の水準まで回復したという。2023年に入ってからは,中国系ディスプレーパネルメーカーを中心に大型TV向けパネルの生産が再開され,稼働率も上昇したため,偏光板など部材・原材料在庫を確保している動きがあるとする。

そのため,偏光板メーカー各社へのオーダーは増加傾向がみられるという。ただ,これは市況の完全回復による実需要拡大による増加ではなく,ある程度在庫を整理できた「ディスプレーパネルメーカー側での在庫補充」や,偏光板値下げ競争下で「ディスプレーパネルメーカーによる偏光板メーカーからの仕入量配分による短期的な需要拡大」の可能性が高いという。

​こうした状況下だが,2023年上期の偏光板需要は回復基調にあり,また2023年第3四半期からは2024年新規モデル発売に向けたTVやTV向けパネルの先行生産シーズンに入るため,偏光板の需要は拡大すると予測する。

面積効果が大きい大型TV向けの偏光板需要が市場全体を牽引する形で,2023年における偏光板の世界生産量は前年比107.9%の54,065万m2になると予測した。

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