名大ら,深海底に広がる発光ナマコの多様性を解明

名古屋大学,米モントレー湾水族館研究所,ベルギー ルーヴェン・カトリック大学は,深海に生息するナマコ類の多くが発光能力を持つこと,そして高い多様性をもち豊富に存在することを新たに発見した(ニュースリリース)。

地球表面の約7割は海であり,その約90%が深海(200m以上の深さの海)であるため,深海生物の生態系や生物間相互作用を知ることは,地球の生物に対する理解を深めることに繋がる。しかし,どのような生物がどのように光るのか,その多様性や進化,生態についてはまだ謎が多い。

深海底で観察される生物の個体数の約1割がナマコだが,ナマコの生物発光に関する研究はこれまでほとんど進んでいない。深海底に生息するナマコの発光を観察するには、元気な状態の個体を観察する必要があるが,従来の研究手法では、底引き網などを用いて海底の泥ごと引き上げていたため,観察する時点でナマコはすでに発光を示せるほど健康な状況になかったと考えられる。

研究では,高感度カメラを搭載した深海探査機を使用し,深海底でのナマコの自然な発光の様子を捉えることに成功した。探査機から伸びたロボットアームによりナマコを捕まえて発光を観察したところ,ナマコの体全体を光の波が,まるでオーロラのように同心円上に広がる様子が観察された

また,深海棲のさまざまなナマコ類の発光能力を試験したところ,新たに13種のナマコが発光することが分かり,世界には42種の発光ナマコが存在することが明らかになり,これまで考えられていた以上に,多様な分類群のナマコが発光能力を持つことが明らかとなった。

さらに,遺伝情報を基にしたナマコ類の類縁関係と発光能力の進化起源を解析したところ,ナマコ類は6回も独立に発光能力を進化させたことが分かった。

特にユメナマコやセンジュナマコなどを含む板足目のナマコ類では,約2億年前に生息していた共通祖先が既に発光していたことが示唆され,板足目に含まれる200種以上のナマコが光る可能性があることが判明した。

また,ナマコ以外も含めた生物全体で考えると,生物発光能力は100回以上も独立に進化してきたことが分かり,地球上の生物発光現象に関する研究を今後進める上で重要な知見の蓄積となった。

この研究により,深海の闇に秘められたナマコの多様性や進化の謎に一歩近づくことができた。さらに研究グループはこの成果から,生物多様性の保全と持続可能な開発を両立できる方策を見出すことが,地球環境および生態系の保全にとっても重要な知見となるとしている。

キーワード:

関連記事

  • 千葉大,ブラックライトで光るコチョウランを開発

    千葉大学の研究グループは,NEC ソリューションイノベータおよび奈良先端科学技術大学の開発した蛍光タンパク質の遺伝子をコチョウランに導入することで,ブラックライト照射下で花が黄緑色の蛍光を発する「光るコチョウラン」を開発…

    2024.01.19
  • 中部大ら,光るカタツムリをタイで発見

    中部大学とタイ チュラロンコン大学は,タイの各地からカタツムリを採取し,その中から,これまで発光することが知られていなかった5種を見つけた(ニュースリリース)。 軟体動物有肺類のカタツムリは世界に約30,000種が知られ…

    2023.09.22
  • 東大ら,深海の底生生物の分布を非破壊で可視化

    東京大学,海洋研究開発機構,産業技術総合研究所は,深海の堆積物中に生息する底生生物の分布を非接触・非破壊で効率的に調査できるツールを開発し,有人潜水調査船を用いてその実証試験に成功した(ニュースリリース)。 地球上に広が…

    2022.07.28
  • 中部大ら,光るミミズの生存戦略とその分布に知見

    中部大学とタイ チュラロンコン大学は,日本の砂浜に棲む発光ミミズの起源と発光の役割に関する新しい知見を得た(ニュースリリース)。 発光するミミズの一種「ポントドリルス・リトラリス」(和名「イソミミズ」)は見た目は普通のミ…

    2021.04.21
  • 名大ら,深海性発光物質の生産者を発見

    名古屋大学,米モントレー湾水族館研究所,モントレー湾水族館,米マサチューセッツ工科大学,米マイアミ大学は,有櫛動物クシクラゲが生物発光に使われる基質セレンテラジンを自身で合成できることを明らかにした(ニューリリース)。 …

    2020.12.12

新着ニュース

人気記事

編集部おすすめ

  • オプトキャリア