早大ら,星の輪廻転生を通じ成長する巨大銀河を観測

早稲田大学,中国清華大学,独マックス・プランク宇宙物理学研究所らは,すばる望遠鏡とケック望遠鏡により,星の輪廻転生を通して成長する巨大銀河の様子を捉えることに初めて成功した(ニュースリリース)。

宇宙の大規模構造に沿って淡く分布するガスは,銀河が新しい星を形成するための材料となる。星が超新星爆発で死ぬと,ガスが銀河の外に排出されることがある。一方で,星を作り続けるには,銀河に降り注ぐガスの供給が絶えず必要となる。

これまで成長途上の銀河が太古の宇宙でたくさん発見されてきたが,持続成長の原動力が宇宙誕生時の原始的なガスの供給によるものなのか,それとも死んだ星の残骸を多く再利用しているのか,明らかではなかった。

そこで研究グループは,110億年前の宇宙にある巨大銀河を観測した。宇宙誕生時の原始的なガスは,ほとんどが水素で構成され,わずかにヘリウムが含まれている。一方,再利用されるガスは,星の核融合によって生成された重い元素を含んでいる。

研究グループは,ケック望遠鏡とすばる望遠鏡の観測データを解析し,この銀河の周辺の30万光年にも及ぶ広い範囲で,水素,ヘリウムと,炭素を検出した。さらにこれらの元素の比率は,太陽で見られるものと同等であることがわかった。太陽系から110億光年も離れた太古の銀河を囲むガスがこれほど重元素に富んでいることは,驚くべき事実だという。

銀河をとりまくガスの動きをシミュレーションと比較することによって,研究グループは,一年間に太陽700個分に相当するガスが銀河に還流していることを明らかにした。

これは,この銀河で観測された星形成の速度(1年間に太陽80個分ほどの星が生まれる)をはるかに上回るもので,ガスの再利用だけで銀河の成長を促すことができることを示している。

今回,水素と重い元素の比率を測定するために,すばる望遠鏡の赤外線観測装置 MOIRCS(Multi-Object Infrared Camera and Spectrograph:モアックス)で撮られた水素ガスのデータが非常に重要な役割を果たしたという。

希薄な銀河間ガスを直接観測することは極めて困難だが,今回この希薄なガス中の重元素を特定しただけでなく,運動状態をも捉えることに成功したことについて研究グループは,銀河の形成理解に向けて大きく前進した成果だとしている。

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