京都大学と国立天文台は,京都大学3.8m「せいめい」望遠鏡を用いてりょうけん座RS型変光星V1355 Orionisのモニタ観測を実施し,巨大爆発現象「スーパーフレア」とそれに伴う超高速プロミネンス噴出の検出に成功した(ニュースリリース)。
太陽・恒星フレアはプロミネンスと呼ばれる温度約一万度のプラズマの噴出現象を伴うことがある。噴出したプロミネンスの速度が十分に大きい場合,そのプロミネンスは星の重力を振り払い,星の外にまで飛び出す質量噴出現象となることが太陽では確認されてきた。
太陽以外の恒星でもフレアに伴ってプロミネンス噴出が確認された例はこれまでにもあったが,そのプロミネンスの速度が星の重力を振り払えるほど大きかった例はほぼ皆無だった。
今回研究グループは,オリオン座V1355星(英名: V1355 Orionis)を連続的に「分光」する観測を京都大学3.8m「せいめい」望遠鏡を用いて2020年12月下旬に1週間ほど実施した。また,それと同時にTESS衛星(NASA)による「測光」観測も行なった。
その結果,TESS衛星とせいめい望遠鏡がそれぞれ,星からの白色光とHα水素線が増大していることを検出し,その後3時間ほど増光が継続した。星で起きたスーパーフレアがこの増光の原因だった。このスーパーフレアは最大級の太陽フレアの7000倍のエネルギー規模である極めて大規模なスーパーフレアであることもわかった。
スーパーフレアが起きている間,Hα水素線が「ドップラーシフト」を起こしており,スーパーフレアに伴ってプロミネンス噴出が起きたことがわかった。検出されたプロミネンスは1600km/sという超高速で噴出しており,星の脱出速度(350km/s)を優に超えていた。
さらに,プロミネンスの質量は太陽での最大級のものの100倍の大きさである1018g 以上で,史上最大の重さであることも判明した。これは,恒星の活動が周囲の惑星環境へと影響を与える「宇宙天気現象」の最極端なケースが捉えられたことになるという。
研究グループは今回の発見について,今後の恒星・惑星科学におけるプロミネンス噴出という現象の立ち位置を大きく変えるものだとしている。