東北大,6G通信に向けた光源の新原理を提案

東北大学の研究グループは,磁石を組み込んだメタマテリアルによる新光源の原理を提案した(ニュースリリース)。

近年,屈折率を時間的に変化させる「時間変調メタマテリアル」が注目されている。時間変調メタマテリアルを用いると,非線形光学効果により電磁波の周波数変換が可能となる。研究グループはこの時間変調メタマテリアルによる周波数変換を用いて,小型で室温動作する6G向けの新光源の実現を目指している。

電磁気学的には,屈折率は物質の電気応答を記述する誘電率と磁気応答を記述する透磁率,それぞれの平方根の積で表される。これまで開発された時間変調メタマテリアルは、誘電率を時間的に変調することで屈折率を時間的に変調する。

一方で,透磁率を時間変調する方法はこれまでほとんど報告されていない。しかしながら,磁気物理や磁気工学の分野では,透磁率は鉄やニッケルなど強磁性体の磁気モーメントの歳差運動の共鳴(強磁性共鳴)付近で大きく変化することが知られていた。

そこで研究グループは,磁気物理や磁気工学の知見をメタマテリアルに融合し,透磁率を時間変調する時間変調磁性メタマテリアルの原理検証実験に取り組み,磁石(ニッケルと鉄の合金であるパーマロイ)と,重金属(プラチナ)の二層膜を作製した。

二層膜に交流電流を流すと,プラチナでの大きなスピン軌道相互作用によるスピンホール効果がスピン流を生み出す。このスピン流がパーマロイに注入されること(スピン注入)により,パーマロイの磁化にスピントルクを及ぼして強磁性共鳴が誘起される(スピントルク強磁性共鳴)。これに加えて直流電流を同時に流すことで,直流のスピン流も注入した。

ここで,基板にシリコンを用いることで 熱伝導性が良くなり,二層膜に大電流を流すことが可能となった。このことは強いスピン注入を可能とする。その結果パーマロイに大きなトルクを働かせ,共鳴条件を大きく変化させることができた。

これらの実験結果を用いた理論計算から,共鳴条件が変わることで透磁率が大きく変化していることが明らかになった。今後,この直流電流を別の交流電流に置き換えることで,時間変調磁性メタマテリアルが実現できるという。

時間変調磁性メタマテリアルを応用すれば,室温で動作する周波数可変で小型の6G通信用の光源が実現できる。さらに透磁率のみならず誘電率も同時に時間変調できる媒質を組み合わせれば,フレネルドラッグと呼ばれる移動媒質を模倣する現象も可能になり,研究グループは,基礎物理の観点からも広く展開できることが期待されるとしている。

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