慶大ら,GI型POFで極細使い捨て内視鏡を開発

慶應義塾大学とエア・ウォーターは,GI型POF(屈折率分布型プラスチック光ファイバ)技術を応用した極細硬性内視鏡の開発に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。

関節内は放射線や超音波検査,MRIでも詳細を把握する事は難しい。今日の医療では手術前に侵襲度の高い関節鏡検査が必要となり,また手術後の経過を観察することも容易ではない。

GI型POFは,中心軸の屈折率分布が最大で,周辺に向かうに従い徐々に二次分布的に減少する屈折率分布を有している。したがって,入射した光は,サインカーブを描きながらファイバ内を蛇行して伝送される。

GI型POFに平行光線を入れると,光はファイバ内で1点に収束し,それを繰り返しながら伝送していく。これは凸レンズ作用を持っているということを示しており,GI型POF内を伝送していく光は,ファイバ軸に沿って,いくつものレンズが並んだリレーレンズ内を伝送してくことに相当する。

リレーレンズは,物体のイメージを遠くまで伝える作用を持ったデバイスであり,これと同じレンズ作用を持つGI型POFは,リレーレンズと同じように反対側に物体のイメージを結像させることが出来る。GI型POFの屈折率分布を理想分布に近づけることにより,高精細な画像を伝送することが可能となる。

患部への挿入部分となる先端の極細レンズ部は,外径1.25mm(太さ18ゲージの注射針と同等)の外筒管に,外径0.5mmのGI型POFレンズを内蔵している。CMOSセンサを搭載したペン型のカメラ部に極細レンズ部を連結することで,極細の硬性内視鏡になる。カメラケーブルをPCに接続し,モニタに表示した内視鏡画像を見ながら検査を行なう。

極細レンズ部は,低コストでの製造が可能となるため,医療用注射針と同じように単回での使用(ディスポーザブル)が可能になる。注射針と同じ細さであるため,局所麻酔下でも使用可能で使用後の縫合も不要な硬性内視鏡として,外来や処置室等での内視鏡検査も可能となるという。

開発した極細硬性内視鏡は,侵襲度が低く局所麻酔下で関節内を動的に観察する事ができ,外来で術前術後の細やかな観察が可能となる。また,低コストなのでディスポーザブル使用可能となり,臨床現場での滅菌作業などの労働力の削減にもつながる。

研究グループは今後,試作機の改善や前臨床評価を推し進め,2024年の実用化を目指すとともに,整形外科領域以外への応用や,検査だけでなく治療用途へも適用を拡大し,検査・治療の短縮や医療費の低減により,国民の健康増進や「ウェルネス(健やかな暮らし)」の実現につなげるとしている。

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