ウシオ電機は,同社が開発した「低濃度の亜酸化窒素(N2O)ガスとメタン(CH4)ガスを,紫外光を用いて分解・無害化できる技術」が,国土交通省の「令和5年度 下水道応用研究で実施する研究テーマ」に採択されたと発表した(ニュースリリース)。
下水道からの温室効果ガス発生量のうち,N2OやCH4が占める割合は大きく,このうち水処理工程から排出されるN2OとCH4に関しては明確な対策技術が確立されていない。
この課題に対し,同社では新たな試みとして波長172nmの紫外光を放射するエキシマランプを用いた光化学反応によるN2OとCH4の分解を検討し,模擬ガスおよび下水処理場からの排ガスを使用した実験を行なった結果,常温・常圧下において触媒等を使用せず光照射だけでN2OとCH4を同時に一定量分解できる研究成果を得たという。
今回採択された研究テーマでは,この技術をさらに発展させ,下水処理工程から排出されるガスの分解に適した紫外線ランプおよびリアクターの研究開発を行なうとしている。
なお,この技術の下水道への実装と応用化には,環境収支と経済収支の両立といった課題があるが,ゼオライトを用いたN2O濃縮技術研究の実績を持つ東京大学の脇原研究室とも協業し,最終的には現場の水処理工程から排出されるガスを用いた検証を行なうことで環境および経済収支に及ぼす影響を明確化し,それらを両立できるランプとリアクターを含む温室効果ガス削減システムの研究開発を行なう予定だという。