京大,遠方銀河の向きからダークマターの影響を示唆

京都大学の研究グループは,120万個にのぼる銀河の観測データを用いて,銀河の向きを系統的に調べ,数千万光年以上離れた銀河の向きが,重力を介してお互いそろっている証拠をつきとめた(ニュースリリース)。

一般相対性理論にもとづき,宇宙全体の様子を記述する「標準宇宙モデル」のほころびを見出せれば,新しい宇宙観が切り拓かれる可能性がある。このような状況下で,宇宙にひろがる銀河を一つ一つ丹念に分光観測して作成された銀河の3次元地図は強力な観測手段を提供する。

しかしながら,形成された銀河はダークマターの重力によってほぼ支配されるため,銀河の形や向きも,ダークマターによる潮汐力の影響を受けることになる。そのため,銀河の形や向きの情報を使って,宇宙の成り立ち・進化に迫ることができる。

研究では,現在,世界最大級の銀河観測データを提供する,スローン・デジタル・スカイ・サーベイ(専用の光学望遠鏡によって全天の25%以上の範囲を観測し,その範囲内に含まれる銀河やクェーサーの位置と明るさ,距離を精密に測定することによって詳細な宇宙の地図を作りあげるプロジェクト)から得られた120万にのぼる銀河のデータを用いて,銀河の向きのそろい具合を調べた。

その結果,数千万光年以上も離れた銀河どうしの向きがよくそろっていることを発見した。測定結果は,宇宙に広がるダークマター分布が重力を通じてお互いの銀河に作用したと考えると,うまく説明できるという。研究ではさらに,重力によって銀河分布が徐々に密集していく速度の測定にも成功し,遠方宇宙でも一般相対性理論と矛盾がないことを明らかにした。

今回の成果は,銀河の向きを使って,宇宙に関する新しい検証手段を確立できたことがポイントとなる。これまでは,分光観測された銀河の位置情報だけから検証が行なわれて来たが,銀河の向きの情報を組み合わせることで,より強力な手段を切り拓くことができた。

研究ではアーカイブデータを用いたが,現在進行中の銀河観測プロジェクト,特に日本を中心としたすばる望遠鏡を用いた観測プロジェクトへ応用することで,さらに高い精度の測定が可能となるため,研究グループは,革新的な成果につながると期待している。

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