福井県立大学と高輝度光科学研究センターは,SPring-8のBL28B2におけるシンクロトロン放射光を利用した高エネルギーX線μCTスキャンを活用し,福井県産の獣脚類骨化石に残された骨組織を,非破壊で可視化することに成功した(ニュースリリース)。
恐竜骨組織の観察は,恐竜の死亡時年齢や,成長速度,代謝などの手がかりとなり,近年の恐竜研究で幅広く活用されている。従来手法では,化石を物理的に切断し,偏光顕微鏡による薄片画像観察を行なうが,化石の部分的な破壊を伴う手法であることから,貴重な標本への利用は困難だった。
今回,福井県産獣脚類大腿骨化石において,従来手法による薄片画像と,研究によるCT画像を比較した。その結果,死亡時の年齢を示唆する成長線や,骨の成長時に見られる血管孔が,CT画像でも従来手法の薄片画像と同様の組織構造が可視化された。
今回の手法により,化石の破壊を伴わない恐竜骨組織の観察が国内で可能となる。この手法は特に,化石の産出数が乏しく個々の標本が厳重に保護された,国内外の恐竜化石研究を行なう際に有効だとする。なお,国産の恐竜化石にこの手法が利用されることは初めてだとしている。