香川大学の研究グループは,拡張π電子系を導入した強誘電性液晶のバルク光起電力効果を世界に先駆けて発見した(ニュースリリース)。
研究グループは,拡張π電子共役系を組み込んだ強誘電性液晶が,半導体的な電荷輸送性を示す一方で強誘電体のような自発分極を示し,分極で発生した電界と伝導キャリアが相互作用することによりユニークな電子機能を示すことを見出している。
具体的には,自発分極によって生じる内部電界によって光発電ができるバルク光起電力効果と内部電界によってキャリア注入が促進され,マイクロメーターレベルの厚膜が低電圧で電界発光する分極誘起電界発光を発見した。
これらの現象は,通常のp-n接合を利用した太陽電池や電界発光素子と異なり,同一の陰極と陽極を用いた対称型素子で実現でき,ポーリング電圧の極性を反転させることにより,素子の極性を反転させることが可能。
分極誘起電界発光においては,極性反転の際に分子が回転するため,電界発光の偏光面を回転することができる。研究グループは,世界で初めてこれらの現象を見出したが,これらの現象と分子構造,分子の凝集構造との関係は十分に解明されていなかった。
今回,同一のπ電子共役系を有するジアステレオマーを合成し,これらの化合物の液晶性と電子物性を比較した。二つのジアステレオマーのうち,化合物(S,S)-1が強誘電性で,分極誘起電界発光とバルク光起電力効果を示した。
化合物(S,R)-1の液晶相ではクロモフォアが層法線に対して平行であるのに対して,化合物(S,S)-1は液晶相においてクロモフォアが層法線に対して45度傾く。一軸配向した試料では偏光電界発光がみられ,ポーリング電圧の極性を反転させると,偏光面が90度回転する。
白色光を照射すると光起電力が発生し,開放電圧は1Vを超える。これらの結果は,キラルな分子が傾き,相の対称性が破れて分極が発生することを示しており,今後の分子設計の指針となるものだとしている。