順天大堂ら,妊婦の食事/紫外線とVD濃度関係を調査

環境研究所と順天堂大学は,妊婦に対しVD栄養状況の調査を行ない,食事からの摂取とビタミンD(VD)濃度には年間を通じて弱い相関がある一方,紫外線によるVD生成とVD濃度には,紫外線の強い夏のみに強い相関があることを明らかにした(ニュースリリース)。

有害紫外線(UV-B)は浴びすぎると肌や目に悪影響を及ぼす一方で,皮膚で(VD)を生成するという働きもある。ヒトのVDの取り込みには食事からの摂取と太陽UV-B照射による皮膚での生成があり,厚生労働省では食事からの摂取目安量として1日8.5μgを推奨している。

一方UV-B照射による皮膚でのVD生成量には様々な要因が関連しており,目安となる日光照射時間を提示することが出来ずにいた。また,美容の観点から日本の若年女性の間でUV-Bを避ける風潮が広がり,その結果,最近では若年女性を中心にVD不足や欠乏が広がってきていることが報告されてきている。

VD欠乏の結果として骨の健康状態が悪化し,骨折などを起こして初めてVD欠乏を認識することになる。そこで研究グループは,日本人の妊婦のVD不足の状態を把握し,要因を推定するための研究を実施した。また,あわせてVD欠乏を推定するためのモデルの構築を行なった。

研究では,妊娠28週の309人の妊婦を対象に血液サンプルからVD栄養状態の調査を行なった。また,食事からのVD摂取量を推定するためアンケートを実施た。さらに,平均的な平日及び休日時の肌の露出状態や日焼け止めクリーム使用の有無などを含めて,採血日から2週間前までに遡った日々の肌でのVD生成量の推定を行なった。

肌でのVD生成量の推定には,近くの実際の紫外線観測局のUV-B強度観測データと,過去の研究で構築された皮膚におけるVD生成量の推定式を用いた。

その結果,最近の妊婦の間に幅広VD⽋乏状態が広がっていることが明らかとなった。また,妊婦の多くは推奨量以上のVDを,⾷事やUV-B照射によって取り込んでいると推定されているにもかかわらず,⾎中VD濃度は全季節を通して⽋乏状態であることが明らかになった。その原因として,妊婦においては摂取したVDの多くが胎児の⾻の⽣成に消費されている可能性が考えられるという。

研究グループは,今回得られたロジスティック回帰モデルをもとに妊婦にVD⽋乏状況について情報提供することにより,妊婦のVD栄養状況が改善されることが期待されるとともに,今後調査対象を,妊婦以外の⼥性や⾚ちゃんにも広げていくことで,⽇本⼈⼥性のVD栄養状況の把握とその改善に貢献するとしている。

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