東北大,歯科治療における飛沫・エアロゾルを可視化

東北大学の研究グループは,レーザーまたは高輝度LEDと高感度高速度カメラを応用し,歯科用エアータービンで発生する飛沫・エアロゾルの可視化に成功した(ニュースリリース)。

歯科治療では高速回転器具や超音波装置を使用する際に水を噴霧することで冷却や切削効果を高めるが,この時に飛沫・エアロゾルが発生する。この飛沫・エアロゾルには唾液,血液,粘膜,歯垢由来の細菌,ウイルスなどの微生物,および歯科材料(歯の被せ物や詰め物)由来の微小粒子が含まれていることが知られている。この微生物や微小粒子は患者や歯科医療従事者の健康に影響を及ぼす懸念があり,飛沫・エアロゾルの動態の解明が重要であると考えられている。

しかしながら従来の測定は,定点における微粒子計測器や細菌培養といった間接的測定,あるいは蛍光色素を用いた測定法が主に用いられており,実際に歯科治療環境で応用可能なリアルタイムに観測できる新たな手法の開発が望まれていた。

研究グループは,高輝度LED光源と高感度高速度カメラを応用し,染色色素等を用いることなく,歯科用エアータービンで発生する飛沫・エアロゾルの可視化に成功した。発生する飛沫・エアロゾルには,歯の切削などに使用される器具の形態および治療部位(上顎/下顎、前歯/臼歯、唇側/舌側等)が影響を及ぼすことを明らかにした。

さらに口腔内バキュームおよび口腔外バキュームを併用することで,発生する飛沫・エアロゾルを大幅に抑制できることが示された。また口腔外バキュームの設置位置が飛沫・エアロゾルの抑制効果に影響を及ぼす可能性を発見した。

研究グループはレーザー技術(画像は高輝度LEDを使用)を応用することにより,実際の歯科医療環境で発生する飛沫・エアロゾルの観測が可能となる道筋を示した。

今後様々な臨床環境で解析を行なうことで,歯科治療由来飛沫・エアロゾルの動態の解明とつながり,新たな歯科治療プロトコールの樹立や空気清浄装置の開発等,より清潔で安心な歯科医療環境の開発につながると期待されるとしている。

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