光科学技術研究振興財団は,独自に独創的な研究業績をあげ日本の光科学の基礎研究や光科学技術の発展に貢献したと認められる研究者を顕彰する「第5回晝馬輝夫 光科学賞」の受賞者および「令和4年度研究助成」の採択者を決定した(財団HP)。
同財団の設立発起人で浜松ホトニクスの創業者の一人でもある晝馬輝夫氏は,光科学技術の重要性をいち早く見抜き,多様な光検出器などを提唱,実現することで光科学技術分野の発展に貢献した。
同財団は,光科学技術の高度化に寄与するため,その功績を記念した「晝馬輝夫 光科学賞」により秀でた研究者を顕彰するとともに,募集テーマに沿った研究に資金を助成する「研究助成事業」を行なっている。
今回,9名の候補者の中から「谷口雄一 京都大学高等研究院 教授(理化学研究所生命機能科学研究センター チームリーダー 兼務)」を「第5回晝馬輝夫 光科学賞」の受賞者に決定した。
受賞理由は「3次元1分子蛍光イメージング技術の開発」。近年,生体内にごく微量しか存在しないウイルスや病原性タンパク質などのさまざまな分子を高感度に検出し,疾病を診断したり生命現象を分析することが可能になりつつある。同氏は,こうした微量分析技術の究極型ともいえる,1分子レベルで試料内の分子の空間的な分布を観察できる新しい1分子蛍光顕微鏡(PISA)を開発した。
従来のエバネセント波を利用した全反射照明蛍光顕微鏡の深さ方向の観察領域が数μmであったものを,独創的な光学系の開発により,PISAは分子レベルの空間解像度を維持しつつ,数100μmと桁違いに拡大した。
この技術を体内から採取した細胞組織や血液内に存在する希少分子の検出や定量化に応用することで,将来的な医療診断の発展が見込まれる。また,生命の分子メカニズムの解明が進むと期待されるとして,今回の受賞となった。同氏には顕彰として,賞状楯,賞牌,副賞500万円が贈られる。
今回「令和4年度研究助成」の採択者24名も決定した。贈呈式は3月7日(火),ホテルクラウンパレス浜松(静岡県浜松市)にて執り行なわれる。贈呈式では,谷口氏の受賞講演および令和2年度研究助成の成果報告講演を開催するとしている。