大阪大学の研究グループは,青色半導体レーザー(LD)を用いた害虫撃墜技術を開発したと発表した(ニュースリリース)。
これまでの害虫駆除は化学薬剤の使用が主流だったが,近年,害虫が薬剤抵抗性を持つようになり農薬が効かなくなってきている。農業では世界の農作物生産額165兆円のうち26兆円の農作物が害虫・害獣被害により失われており,化学薬剤に変わる害虫駆除法が求められている。
今回の成果のポイントは二つある。一つはレーザー光で駆除する際の害虫の急所の発見と,もう一つは害虫検知,追尾,ショットの連続動作による撃墜の実現となっている。
具体的には,薬剤抵抗性を持ち農作物に甚大な被害をもたらす害虫・ハスモンヨトウ(蛾の一種)を使用し,その急所が胸部や顔部であることを突き止めた。検知と追尾に関してはカメラとガルバノミラーを用いたシステムによりレーザーパルスを照射し,飛翔するハスモンヨトウを打ち落とすことに成功した。
研究グループの,大阪大学レーザー科学研究所 教授の山本和久氏によれば,「蚊のレーザー駆除の研究はこれまでも知られているが,蛾は体が大きいため,低出力で撃つには局所的な照射による急所の発見が必要だった。今回その急所を発見できたことは実用化に向けた大きな一歩になる。農業はもとより飲食店や家庭でも害虫駆除は身近であり,農作物や食品の安定的な供給が可能な社会実現に開発を進めていく」とコメントしている。
なお,今回の研究成果は現在開催しているレーザー学会第43回学術年次大会において発表された。開発している技術は,まずは農業用途を想定しており,2025年の実用化を目指すとしている。